【d!】異形愛慕 (ページ2)

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一話ページ2

＊

目が覚めたのはついさきほどのことだった。

目を覚ますことができたのは、
私の顔をバケモノが覗き込んでいたからだ。

そして、私は今そのバケモノに追いかけられている。

『マ…マッて、くダサイ、マッテ、サチ様…』

コードや金属が辺りに散らばる部屋で
私は『サチ』という名前をずっと呼び続けるバケモノから逃げ回っている。

バケモノは人間にコードが絡まったような見た目だ。

所々から金属片が見えていたりしており
人間でいう心臓の部分には
淡く赤く光る物体が見え隠れしている。

起きてすぐ視界にバケモノが入ると
私はそのまま起き上がって逃げ出した。

それから止まらずに逃げ回っているせいか
息はもう限界だ。

だが、止まればきっと捕まる。

止まってしまえばどうなるかわからない
恐ろしさばかり込み上げてきて、ひたすらに走る。

そういえば、私はいつからこの場所に来ていた？

いつから眠っていた？

起きたら金属や機械の部品などが
散らばった部屋で眠っていたんだ。

いつどうやって来ていたのか
このバケモノは何なのか

それすらわからない。

逃げなければならない。

そういった思考から一度離脱し
この場所について考え始めれば

私は足元に落ちていた部品に足をひっかけてしまった。

思いっきり頭から転倒した。

「やめ、やめて…！！」

ジンジンと痛んでくる頭からは
生ぬるい液体が垂れてくる。

きっと血だ。

部屋の隅に追いやられてしまった私は
ただバケモノにやめてと懇願するしかなくなってしまった。

『さァ、サチ、さサマ、ご自宅へ、帰られル、おじお時間でス、はや、早ク』

バケモノは機械音に近い声を発して
私に手を差し伸べるようにコードを伸ばした。

私はただ恐怖で、あがる息を整えようと必死だった。

バケモノに、殺されてしまいそうで。

バケモノのコードが私の頬に触れた。

死んだかも、これ。

そう思った時、ガシャンと機械が崩れる音がした。