【僕のヒーローアカデミア】命懸け少年 Part4 (ページ6)

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裏切りの情交ページ6

夜は、当たり前に来た。いや、この時が本当に夜かどうかなど知らないが、彼(･)が来たという事は則ちそういう事なのだろう。

薄灯に照らされ、禁色の赤の着物から伸びた肌は白く反射して姿を見せた。華奢な身体は輪郭を露にした蔭を見せた。黒髪は存在を主張しつつ揺れて見せた。そして、憂いに沈む面貌は格別に美しく見せた。

これが生きた人間の美かと、男は表に出さずも怯んだ。これを、どうして手放すことができようか。いやできまい。

手を伸ばした。触れる事が叶うかはわからないが、コレは、己のモノだからと。

その柔肌は、手に吸い付くように瑞々しい。求める事でしか、触れられない存在。肘から下、つまり''無''の始まりに齧り付いた。うっすらと残った分解痕から血が浮かび、垂れる。甘美である。その液体の紅玉を口に含み、転がした。

廻輪は、その痛みなど感じてはいないようだった。仮に何か覚えているとするならば、自身の脳では処理できなくなった快楽への享受のみ。掠れた嬌声が小さく室内に反響した。

少年は思う。このまま、全ての血を吸い取ってくれればいいのに。そうしたら貴方は僕を離さずにいられる。僕は、死ぬ事ができる。

治｢…っ、これは、罰だ。お前は、俺自身の為に無駄な血を流す。そうして、お前の大嫌いな俺と生きるんだ。っはぁ…もっと流せ…俺を、忘れるな。俺を、刻み込め。お前と、永遠に、生きてやる…！｣

彼は、血を啜りながらそう言うのだ。この形相を目の当たりにしたらどんな恐ろしい化け物も尾を巻いて逃げ出すだろう。もっとも、廻輪は逃げ出しはしなかったが。喘ぎの他は、骸のように黙りである。

そこにはかつて輝かしい未来の為に今を生きる級友達と笑いあった少年の姿は無かった。何が彼をそうさせたか。明白である。彼の全てがそうさせたのだ。

鉄のにおいが鼻をつく。嫌になるほど嗅いだにおい。それは、自身から流れるものであることが一番多い。

重ねられていただけの衣など簡単に剥がされた。顔が間近に来る。唇への感触は、何でもないように受けた。身体を這う手には一向に慣れやしないと思うが。

吐息は身体を熱くした。汗は、身体を濡らした。

酷い。酷い。酷い時間だ。

この男は、酷いほどに優しい手で、僕を抱く。

果てた。

最後まで、血は流れ続けた。

治｢明日、死柄木が来る。｣

去り際、それだけ呟いた。

…あぁ、これが本当の罰か。

なんて酷いんだ。

この人は。この世は。

一番酷いのは…僕だ。