Short Story (ページ10)

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🐽🐰濁りページ10

深夜の高速道路をドライブしている。大した車じゃないけど、2人でドライブをするには十分な車だ。いつものように自由に行きたいところまで行く。行く先もわからぬまま。

真夏の車内でも夜中だと少し肌寒い。体温が恋しくなって、隣で運転している大切なひとの、ハンドルを握っていない方の手にキスを落とす。

高速に乗ってどれくらい経っただろうか。私たちは生理現象が訪れて近くのサービスエリアで一休みすることにした。
お互いに溜まっていたものをトイレに吐き出し、コンビニでアイスアメリカーノを買った。

用が済んだ私たちは、車内に戻り少し自分たちの時間を過ごしていた。すると、｢あのさ…｣と遠慮がちな声が聞こえて、暇つぶしに触っていたケータイをおいた。

｢なあに？どうしたのチャンビナ｣

｢俺らいつまでこんな曖昧な関係続けるんだろう。関係をはっきりさせた方がいいと……っ！｣

最期まで話終わる前に唇を塞いでやった。彼はなぜ、こうなのか。私はこのままの関係が1番好きだと何度も伝えているのに。

長く、濃密なキスを交わした後、私はできるだけ優しく微笑み言葉を放つ。

｢チャンビナ、私はあなたと付き合ったりはしないよ。…離れたりもしない。今はこのままの関係がベストだと思ってるんだけど、あなたは違うの？チャンビナ｣

｢……ごめん。Aの言っている通りだと思う。Aのことは好きだけど、恋愛感情はないし。でも離れることもできないし、今は、このままがいいや｣

彼の答えに私はにっこりと笑い、再び軽くキスを落とした。
そして、私たち以外誰もいないこの車の中で、偽りの愛を育む。いつものように、お互いの寂しさを埋めるように、ゆっくりと。

彼は根が真面目だからこんな関係がいつまでも続くのが本当は耐えられないんだろうな。その感情は正しいと思う。
私だってわかっている。こんなのはおかしいって。きっとお互いに自分を傷つける選択をしているって。わかっていても、前に進む方法も、それを教えてくれる地図も無くしてしまったから、もう正しい道がわからないから彷徨い続ける。

寂しくなって、彼の太い腕に縋って、寂しさを紛らわせる。肌を重ねているはずなのに孤独を感じて、また彼に縋る。
多分彼も同じ気持ちだから私たちは離れることが出来ない。

｢A、好きだよ｣

｢私もだよ。チャンビナ｣

熱を放った彼にキスを強請ってみる。
愛する事も、手放すことも、選ばないでいる私たちは、ずるい大人だね。