🐶初恋 ページ7
｢私の彼氏、また浮気してるんだよね｣
｢じゃあ別れたら？｣
｢うーん、それでも好きなんだよねぇ｣
僕のバイト先にいる女の子はずっと彼氏に浮気されている。早く別れたらいいのにまだ好きだから別れないといつも言う。
僕にはこの彼女の言っている意味が全くわからない。自分のことを幸せにしてくれない人と付き合っているのは、無駄な時間を過ごしているのと同じだと思っているからだ。
こんなこと言っても、僕は恋愛経験がないからあまり説得力がないかもしれないけれど。
｢スンミン君、今日送ってってよ｣
｢僕はいいけど彼氏さん何も言わない？殴られるのとか嫌だよ｣
｢全然大丈夫！うちの彼氏ヒョロヒョロだし、気にしないと思う｣
そういうものなのだろうか。恋人とはもっと大切な存在ではないのだろうか。
多分このカップルは変わっている方なんだとは思う。そうだとしても、同じバイト仲間として幸せになってほしい。
もっと素敵な相手が近くにいるのに。
｢ここまでで大丈夫。ごめんねわざわざ。ありがとう｣
｢…本当に大丈夫？｣
彼女は体をわずかに震わせていた。緊張が走っているように見える。
もしかして、一緒に住んでいる彼氏に何かされているんじゃないか。そんなことを思ってしまうくらい不安そうだった。
｢彼ね、夜遅く帰ると手を出してくるんだ。だから怖くてスンミン君に勇気もらおうと思ったんだ。ごめんね？巻き込んじゃって｣
申し訳なさそうに笑う彼女を見ていられなくて思わず抱きしめた。抵抗がないのを確認してさらにぎゅっと力強く抱きしめる。
｢A、君はもっと幸せになっていい女の子だよ。こんな泣きそうな顔なんて似合わない｣
｢…ぅん。……ありがとう｣
あの日を最後に彼女は僕の前から消えた。バイトにも来なくなってしまった。連絡先も消えてしまった。
無事なのか、わからない。
一緒に歩いた道を1人で歩いてみる。
だけど途中で彼女は1人で帰ったから家がわかるわけではない。だからいつも途中までの道のりで君がいないか探している。
僕は君のことが好きだったんだと、今更気づいてしまった。あまりにも遅すぎた。
あの日、君はSOSをくれたんだよね？
それに僕は気づくことができなかった。
泣いたって君が戻ってくるわけでもないのにどうしようもなく涙が溢れ出る。
恋ってこんな気持ちになるのを君は教えてくれたのに。僕は君に何もできなかった。
また君に会えるまで、僕は君を探し続けるよ。
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作者名：むち | 作成日時：2024年2月13日 23時
