🐿インジビブル ページ5
殺伐とした教室。僕のクラスは協力性がない。最初はそんなことがなかったのに、いつの間にかみんなが誰とも話さなくなっていた。
まるで自分の存在を消したようだ。本当はこの現状を変えたいけど、僕一人の力ではどうすることも出来ないだろう。それに何から始めたらいいのかもわからない。僕は何をするべきなんだろう。
結局諦めたように日々を過ごしていた。
そんな僕に、いつからか見えるはずのないものが見えるようになった。教室の真ん中にその子はいた。
“その子”とは、この学校の制服を着た半透明の女の子だ。多分、僕にしか見えていない。女の子はずっと見えているわけではない。僕がこのクラスについて考え始めるとだんだん見えてくるのだ。ぼーっと宙を眺めている事もあれば、何かを必死に考えている時もある。
この女の子はもしかするとこのクラスを変えるヒントを持っているのかもしれない。僕はそんなことを考え始めていた。
(今日話しかけてみようかな)
言葉が通じるかはわからないけれど話しかけてみることにした。
｢ねぇ、君はいつも何してるの？僕に教えてよ｣
女の子がいつものように教室の真ん中にいたから話しかけてみると、驚いた顔をしていた。そして教室から飛び出してしまった。
｢ちょっと待ってよ！教えてよ！知ってるんでしょ？この世界の終わらせ方！｣
女の子を追いかけて来たことの無い屋上まで来てしまった。フェンスまで逃げたその子は立ち止まってこちらに振り向いた。
｢この、屋上のフェンスって牢屋みたい。あの教室と一緒｣
｢やっぱり君は何か知ってるんだよね？｣
｢何も知らないよ。でも、変わってほしいなって思う。変える勇気も、変わる勇気も、私にはなくて後悔しているから｣
勇気。確かに僕に足りないものも勇気かもしれない。
いつの間にか僕らは笑ってしばらく並んで話をしていた。
｢僕って何の為に生まれたのかな｣
｢世界を救う為じゃない？｣
｢そんな訳あるはずないだろ｣
｢そんなのわからないでしょ｣
｢じゃあ誰の為に生まれたのかな？｣
｢誰のために生まれたのかな｣
｢どこに行くのかな？｣
ぶつけても仕方のない質問ばかりしてしまっった。適当でも答えてくれるのが嬉しかった。久しぶりに学校で話したからかもしれない。
みんな本当は僕と同じかもしれない。それなら。
｢みんなの世界のヒーローになるんだ｣
ただ漠然と透明な君に誓ったこと、嘘じゃない。
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作者名：むち | 作成日時：2024年2月13日 23時
