🐽🐰笑顔の魔法 ページ3
特に何かあったわけではない。自分の住んでるマンションの屋上に行ったことがないなと思ったから何となく、行ってみただけだった。
屋上の扉を開けると、フェンスの向こう側に立っている女の子がいた。何をしようとしているのかを考えて背筋がゾッとする。思わず俺は声をかけた。
｢おい、そんなところで何してるんだ。危ないからこっちにおいで｣
｢…あなた誰？｣
｢俺はソ・チャンビン…って、そんなのどうでもいいだろ。手貸してやるから、ほら｣
｢ううん、大丈夫。私はこっちでいいの｣
彼女か頑なにこっちに来ようとしない。その焦りでだんだんイライラしてきた俺は、無理やり彼女の腕を掴んでこちら側に引っ張った。
｢ちょっと！勝手なことしないでよ！｣
｢何をしようとしていたかは聞かないけどなぁ、お前こそ勝手なことしようとしてたんじゃねぇの？｣
そう言うと途端にポロポロと泣き出した。こんなか弱い彼女こ苦しめる何かがあったんだろうけど、俺からは聞くことはできない。
俺は女の子が泣き止むまで背中や頭を撫でていた。
｢…ありがとう。助けてくれて｣
｢理由は聞かないけどさ、こんな悲しいこともうすんなよ。俺が悲しくなる｣
｢…今日出会ったばかりなのに？｣
｢そーゆーもんだろ。俺とお前はもう友達だよ。またなんかあったら俺に言えよ｣
自分でもぶっ飛んだこと言ってるなと思った。彼女を助けたい一心だった。
｢もうここまで首突っ込んだからさ、これから鬱陶しいほどお前の人生楽しませてやるよ｣
｢えっ、それって…プロポーズ？｣
｢えっ！？いやっ、そーゆーつもりじゃ！！｣
確かにあの言い方はプロポーズと思われてもおかしくない言い方だった。紛らわしかったか？でも嘘をついたつもりもないし！うわあ、女の子相手に変なこと言っちまった…。と考えていたら隣から笑い声が聞こえた。
｢ふははっ、チャンビンさん面白いんだね。何だか私の悩み事なんてどーでも良くなってきちゃった。ありがとうね｣
｢…！｣
笑った顔があまりにも綺麗すぎて驚いた。正直俺のタイプすぎる。さっきあのまま求婚しておけばよかった。
｢あ、あと私の名前はAって言うの。お前って呼ばれるの好きじゃないからこれからは名前で呼んでね！｣
にっこり笑ったAはやっぱり可愛くて綺麗で、俺を射止めるには十分だった。
それから1年後にAに2度目のプロポーズをすることになるのはまた別の話だ。
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作者名：むち | 作成日時：2024年2月13日 23時
