6話 ページ9
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"もし困っている人がいるのなら助けなさい"
小さい頃から先生にそう言われてきた。
その人が助けて欲しいと思うのならば助ける。助けてと言うのならば助ける。手を貸してほしいと言うのならば手を貸す。
でも…
「Hey, in welche Straße soll ich hier abbiegen?」
『えっ、えっと、その』
相手の言語が分からない場合はどうすれば良いんだろう…!?
この人が喋ってるのは多分英語じゃない…!なんかそんな感じする!てか英語すら本当に簡単なものしか分からないのに!!
どうすれば良いか分からずあたふたしていると、突然その人はくつくつと笑いだした。
「Hahaha! Es ist immer noch verdammt unverändert」
『?』
「Ah, das kann ich dir jetzt nicht sagen」
その人は突然笑いだしたかと思ったら、今度は顎に手を当てて何か考え始めた。
そして「…あー、あー」とマイクテストのように声を出したかと思ったら、
「あー、…ココはどうやっていけばいいんだ?」
と、少し片言ながらもその人は今度は日本語で話して来た。どうやら道に迷っているらしい。
『えーと…あいうぃるゴーうぃずユー!』
「ふ、Thank you」
とまぁそんな感じでボクはその人を案内することになった。
目的の場所に行く道中、その人は只管ボクのことを見つめてきた。その人のサングラス越しに視線が突き刺さっている。
しかもお互い黙ったまま。なんて気まずいのだろう。
でも結果的には無事に目的地に辿り着くことができた。
『…合ってますか?』
「Yes」
良かった、合ってた。
これで用件は終わったとボクは来た道を戻ろうとくるっと後ろを振り向いた。
─────すると、その人は突然ボクの左腕を掴んできた。
ボクがそれに驚くと、その人は掴んでいる手とは反対の手でボクの首筋をつぅ…と撫でてきた。
『!?』
「…
その人はニヒルな笑みを浮かべてボクの
あ
青薔薇だ
青薔薇が咲いてる
どこに?
──────"その人"の首に
『─────!離して…!!』
そう思った瞬間、背筋がゾワッとした。
"逃げろ"と本能的に思ったボクは、その人の手を振りほどいて一目散に走り出した。
その日はずっと"青薔薇"が頭から離れなかった。
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作者名:漢方薬の達人 | 作成日時:2023年6月9日 9時