1話 ページ4
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『──────潔さん』
ボクが後ろからそう呼ぶと、潔さんはムスッとしながらこちらに振り向いてきた。
「前から言ってるけど、”潔さん”じゃなくて”世一”だろ?」
『”前から”?今初めて言われましたけど』
ボクが首を傾げながらそう聞くと、潔さんは「可愛い」と言いながら頭をよしよししてきた。
「Aは全然変わってないなぁ。”前”も中々呼んでくれなかったもんな〜」
潔さんは懐かしむようにそう言った。
「俺が”愛してる””好きだ”って言ったら、お前は同じように返してきて。それが例え俺じゃなくても同じように返して。
本当に……」
”
──────あ、
今日初めて会ったはずなのに、ボクは直感的にそう思った。
普通そんな感情を込めた瞳で見つめられたら、先程のように怯えるはずなのに
潔さんのそんな瞳を見たボクは、何故か安堵してしまった。
”前と変わってない”って
『……ボク、そろそろ帰ります』
ボクは自分自身に言い聞かせるようにそう言った。
でも、心のどこかでは”離れたくない””離されることなんて出来ない”って思った。
「うん、分かった。気をつけて帰ってね」
潔さんは爽やかな笑みを浮かべてそう返してきた。
ボクはコクンと頷いて潔さんに背中を向けて、家に向かって歩き始めた。
途中チラッと後ろを見てみると、潔さんは感情のこもってないような...感情がこもりすぎているような…
どちらとも取れる表情でこちらを見つめていた。
──────後ろから付けられている気がしたのは、きっと気のせいだろう
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作者名:漢方薬の達人 | 作成日時:2023年6月9日 9時