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オレンジ色の尾を夜空に幾本も引いて、火の矢が左半分しかきかない視界一面を染め上げるほどの群れとなり追いかけてくる
八田:赤い怪物!!
悲鳴に近い美咲の声が聞こえた
八田:助けてくれ!ください!
猿比古を、助けてっ━━
立ち颯む背後で熱風が膨れ上がった。
熱風をともなった炎が文字通り大波となって夜空を呑み込みながら、襲い来る火の飴に真っ向から向かっていく。
飛来するロケット花火の大群をひと呑みにし、残骸も遺さず焼き尽くすと、波打ちながらそのまま俺の頭上に迫ってくる。
巨大な炎の壁が空から落下してくるような光景に、俺は逃げ場もなく、Aを背中から降ろして庇うように抱きしめた
コイツだけは何があっても守るんだッ…!
ふわり、と強く瞑っていた目を緩めると端から白い手が現れ、俺らを囲むように抱いた。
顔面を炙る熱風が冬の陽だまりのような柔らかな熱に変わった。
炎の大波が地面を叩き、跳ね返り、もがき苦しむように地表をうねる。
アスファルトが赤く焼け、ぐつぐつと泡立つ。
しかしそのぽかぽかした陽だまりがシェルターになり、炎が俺らを焼く事はなかった
炎の波が引くと、沸騰したアスファルトが急速に冷え、でこぼこに泡立った形で黒々固まっていく。
平坦なアスファルトが無事に残っているのは、自分を中心とした直径1mほどの円だけだ
………助かっ………た………?
と、思った途端、力がふっと抜けた
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作者名:神夜 | 作成日時:2017年4月8日 21時