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ぴりっ、と静電気のようなものでうなじが粟立つのを感じ、はっと画面に目を戻した。
ビルを攻撃していたティラノサウルスが、水をかけられた小動物がびくっと驚くようなコミカルなリアクションをした。
ディスプレイの角にかかった飛沫が画面の中の仮想空間に侵入したかのような━━
2体のティラノサウルスは文字通り尻尾を巻いて画面の外へと逃げていった
何だ、これは……こんな動きはプログラムしていない
襲撃者が逃げ去ると、ビルの正面の自動ドアが開き、中から一体のキャラクターがちょこちょこと歩いて出てきた。
簡素な衣装を身につけて、特徴に乏しい目鼻立ちをした、3頭身の3Dキャラクター。
jungleの初期状態のアバターだ。
ソイツがハッキングプログラムのウィンドウから出て、ディスプレイの中央まで歩いてきた。
「目が合った」と、感じた。
ネットの向こうでアバターを操っている何者かと。
弾かれたようにディスプレイから身を離した。
後ろについた手がロフトの縁からがくんと滑り、危うく逆さまに転げ落ちそうになった。
ぱちぱちぱち、とアバターが小さな手で叩いた。
頭の上に吹き出しが現れ、台詞が一文字ずつタイプされていく
【ナイスファイトです、中学生。
黙って見物しているつもりでしたけど、面白い事してるからちょっと挨拶に来てしまいました。こんにちは】
伏見:お前………何だよ………
掠れた声で呟いた。
何かしらの手段でこっちを逆ハッキングしてきたにしても、ヘッドセットは外しているから相手に声が聞こえるはずはない。
しかしどういうカラクリなのか、
【jungleのエライ人です】
と、吹き出しに返事がタイプされた。
すっとぼけた自己紹介だ
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作者名:神夜 | 作成日時:2017年4月8日 21時