【wrwrd】チート少女、慕われる (ページ8)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:1,364 hit

お茶会⑤ ページ8

音がしないようにゆっっっくりと、扉を開け、中に滑り込む

そっと辺りを見回すと窓辺に人影があった。エーミールさんだ

千鶴はクスッといたずらっ子のような笑みを浮かべると、彼の背後に素早くまわり、耳元で…

『わぁっ！』

「ぎゃぁぁぁあ!?!?!?!?」

いきなり驚かされたエーミールは、椅子から飛び上がり、怯えた表情でバッとこちらを振り返る

そして、背後にいるのが千鶴だと認識すると、途端にほっとした表情になった

「っなんだ、千鶴さんでしたか…｡っもう！こんなことしちゃダメですよ！」

『はーい、ごめんなさいっ』

エーミールが千鶴に対し、怒ってみせる

ただ、こんな軽いイタズラをした時のエーミールさんの怒り方は全く怖くない

ぷんぷんという擬音がつきそうな顔と声をしているからだ

それに、大抵こんな時はある行動をすればうやむやになると、事前に鬱先生に教わっていた

それは……

ぎゅっ！

…そう、抱きしめることだった

「ゑ！？千鶴さん!?!?!?!?ななな何を!?!?!?あわわわわわわ……!?」

『エーミールさん、びっくりさせてごめんね？』

「わっわわ分かりました！分かりましたから離れてぇぇぇ!!!」

顔を真っ赤にして、手を忙しなく動かすエーミール

いつもならこの辺りで離れるのだが、目の前のボタンになんだか違和感を感じる

『あ、エーミールさん、シャツのボタン取れかけてます』

「へ？あ、ああ、…本当ですね…」

上から２番目のボタンが力なくプラン…と垂れていた。…今しがた感じた違和感はこれだったのだろう

『んー…｡今パパっとつけちゃいましょうか』

「え？」

今からお茶会へ行くのだ。せっかくの機会なのだから、ボタンくらいきちんとしていた方がいいだろう。

(それに、エーミールさんに取れかけのボタンは似合わないもんね)

思い立ったが吉日。千鶴はよし、と腕まくりをした──｡