蝶よりも花よりも、丁重に扱え……！！ ページ13
乙骨の反転術式おかげで、特に怪我の酷い真希の呼吸やAの呼吸が正常になっていく。
里「……。」
里香はその様子を傍で見ていた。その中でも特にAをよく見ていた。そして心做しか心配そうに彼女を見ていた。しかし……
乙「！！」
突如乙骨の目の前から、倒れていた筈の真希の姿が消えた。隣を見ると、少し遠くに移動した里香が真希を抱えていた。
里「ず゛る゛い゛！！ ず゛る゛い゛！！……お゛前゛ばっかり！！！オ゛前゛ばっかり！！！」
真希を妬む発言をしながら、真希を揺さぶる里香。里香にとっては真希は、当初大切な乙骨を虐めようとした人物であり、大切なAと友人と呼べる親しい仲になっており、そして今では乙骨からも信頼され、Aからも慕われている女だと思っていた。
里香にとって、大切な二人に慕われている真希……里香には、とても羨ましくもあり許せなかった。
乙「何をしている……里香。その人は僕の恩人だ。蝶よりも花よりも、丁重に扱え……！！」
しかし、その扱いを乙骨が静かに咎める。彼にとって真希は、自分の生き方を変えてくれた、大切な友人であり恩人でもある。そんな恩人を不躾に扱うことは許さない。
里「あ……あ……ごめんなさい、ごめんなさい！！」
乙骨に咎められた里香はすぐ真希を乙骨に返し、謝罪した。乙骨を怒らせるつもりはなかったのだ。乙骨に嫌われたと思った里香は、泣きながら乙骨に懇願した。
里「怒らないで……。」
乙「怒ってないよ。」
里「嫌いにならないでぇ……。」
乙「嫌いになんてならないよ。」
乙骨にとって里香は大切な幼馴染……怒ることでもなければ嫌いになる事なんてありえない。ボロボロ泣いている里香に、乙骨は笑って答える。
常に僕らに優しかった里香ちゃんは、ちゃんと言えば分かってくれるのだから。
それよりも乙骨は、静かに見下ろす。眼下に見下ろすと、夏油の姿が見えていた。
乙「僕らの敵はアイツだよ。」
里香は乙骨に習って眼下に見下ろす……乙骨の声はあの人間を憎んでいるように聞こえる声だった。
里「……憂太、アイツ嫌い？」
乙「あぁ……Aを傷つけたヤツだ……大嫌いだ。」
彼女を傷つけた罪は重い。それは里香にとっても同じである。Aを傷つけたアイツ……。
里「Aを傷つけた゛ぁ……じゃあ里香も嫌いぃいい゛。」
さぁ……反撃開始だ。
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作者名：如月 | 作成日時：2023年1月25日 2時
