第5話 ページ6
私を出世の道具としてしか見ていない母は、特段珍しいわけではない。貴族とはそういうものであり、今日もそうして地位を守ってきたのだから当たり前のことなのだろう。きっと目の前の母も、物のような扱いを受けてきたから、私にもそうしているのだと私は感じていた。
『ランギルス様について……ですか？』
彼の方が家格が高いため、様付けをしなければいけなかった。
｢ええ、そうよ。……A、ランギルス様にお会いしなさい。｣
『えっ？……もう会ってますが』
｢そういう事ではなくて。貴方が許嫁なのだと周囲に広めるために、魔法騎士団本部に直接行って挨拶してきなさいと言っているの。今日ランギルス様はちょうど参内するご予定らしいから｣
───────これだ。この理由さえあれば、都合が良い。私は母の考えに初めて好感を持った。
『それは…宜しいのでしょうか。ランギルス様にとって、それは喜ばしいことではないように思いますが、』
本当は理由が出来て嬉しいけれど、素直に口には出さない。口に出してしまえば、母をつけ上がらせることに繋がる。そうすれば母はもっと私に問題を押し付けてくるようになる。それだけは、阻止したかった。
｢お黙りなさい。貴方はただランギルス様と結婚すればいいの。そうすれば結納金が私に入ってくるんですから、素直に従いなさいな｣
『……はい』
｢一昨日の内に一報を出してあるから、今行きなさい。……これは、あなたの為でもあるのですから｣
…母が私にそこまで冷たくあたる理由は分からない。私を結婚の道具として見ている以外にもあるのかもしれないが、私にはそれ以外の考えは浮かばなかった。ただ、それでもいいと諦めてしまっているのも本心だった。
『…分かりました。行って参ります』
母に気付かれずににそっと息を吐き出す。何はともあれ、彼に会いに行ける。その事実だけで、私の胸は温かくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオ - この作品凄く面白いです。更新待ってます。 (2019年5月14日 0時) (
レス) id: c32429c7d7 (このIDを非表示/違反報告)
マルメロ(プロフ) - 狐さん» 返信が遅くなり、申し訳ありません。素敵なお言葉を賜り、大変有難い思いで一杯です。有難うございます(´∀｀*)更新も、これからペースをあげていきたいと思っています。応援有難うございました。 (2019年1月28日 22時) (レス) id: dcb3f35ff0 (このIDを非表示/違反報告)
狐 - とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2019年1月12日 21時) (レス) id: 8761e041e7 (このIDを非表示/違反報告)
マルメロ(プロフ) - 零(ゼロ)さん» 返信が遅くなり、申し訳ありません。嬉しいコメント、有難いです(´∀｀*)ここのところ試験や大学の受験勉強などで忙しくしていたので、これからはもう少し更新出来るかと思います。応援有難うございました。 (2018年11月26日 12時) (レス) id: dcb3f35ff0 (このIDを非表示/違反報告)
零(ゼロ)(プロフ) - とても面白かったです！これからも応援しています！頑張って下さい！ (2018年11月14日 15時) (レス) id: 9a3d801151 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
