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返事は特に返ってこない。
けどダメだとも言われてないので、
先生の前まで向かいながら、私は続けた。
『私、正門先生のことが、好きです。』
そこでようやく、正門先生の表情が動いた。
少し驚いたような、
困惑したような、複雑な顔をしている。
『この1ヶ月先生に距離を置かれて、わかりました。よくある憧れとかじゃなくて、本当に好きなんです。
けど、本当に好きだからこそ、先生を困らせてしまう…』
思い返せば正門先生を好きになったのは、
初めて授業を受け持ってもらった今年の4月。
それから毎日幸せだった。
それまでの学校生活もほどほどに楽しかったけど、
いきなり人生が色づいたみたいだった。
それからひたすら追い続けて、
なんだかんだで先生に相手をしてもらって。
でも距離を置かれて、
安達先生に色々と気付かされて…
今思えば充実した初恋だった。
『…初めて好きになった人が、正門先生で良かったです。』
思うままに言葉を紡ぐうちに気付く。
そっか、私は、
この恋を終わらせるためにここに来たんだ。
『人を好きになるのって楽しいし、苦しいし…先生を好きになったからいろんな気持ちを知りました。
けどそれが迷惑なら、それはもう楽しいだけじゃ済まされないから…私、先生を困らせたくはないんです。
だから…今までありがとうございました。』
お礼まで伝えたら、
出てくる言葉が無くなった。
私が伝えたいことはこれで全部らしい。
正門先生は何も言わない。
表情は変わらず複雑に曇ったままで、
ああ私は、最後の最後まで押し付けてしまったのか
と、申し訳なくなる。
…あーやばい、泣きそう。
もうこれ以上は、ここにいたらダメだ。
そう思って、
先生に背を向けてその場から離れようとした。
その時。
パシっ、
『……っ、え？』
掴まれた右手が、身体の進行を止める。
驚いてその手の先を見たら、
さっきと同じ、顔を曇らせた先生。
一体何事…
グイッ
『わっ、』
勢いよく引き寄せられて、先生の胸に飛び込む。
何事かと混乱してる私の頭上で、
聞こえた先生の声。
正「……勝手でごめん。」
『…先、生？』
先生から続く言葉はなく、
ただ静かに、その腕の中にいた。
暫くして離されたかと思うと、
先生は無言のまま、準備室を出て行ってしまった。
『……え？』
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作者名：ふぉんと
| 作成日時：2022年12月27日 22時
