x = 34 / side M ページ35
.
side Masakado
「最近なんか静かですねぇ」
『え？』
「ほら、あのしょっちゅうここに来てた、大吾先生の…」
『あぁ…確かに静かになりましたね 笑』
同僚の田中先生と準備室にいた時のこと。
彼女の目的が質問やお手伝いだけじゃないことは
ここにいる誰もが気づいていた。
それでも咎められることはなかったのは、
あの子の愛嬌がなせる技なのか。
田「…寂しそうですね笑」
『…そう見えます？』
田「まああれだけ尻尾振ってた子犬がパタっと自分の元に来なくなったら寂しくもなりますよねぇ 笑」
田中先生の言葉に曖昧に笑い返す。
そうか、俺、寂しそうに見えるのか…
自分で突き放したのに、勝手だな。
事の発端は、研修の最終日。
用事があるという大吾とは
会場を出てすぐに分かれて。
駅まで向かおうとした道のりに彼女はいた。
「良規くん、久しぶり…」
『……久しぶり。』
ゆい子ちゃん、いや安達さんは
やっと話せた、と俺を見て微笑んだ。
別れたのは大学3年の冬。
俺がみんなに優しいから、
自分が特別なのかわからなくなった、
もう耐えられない、と言われたのがきっかけ。
自分なりに大切にしてたつもりだったけど、
教職試験も控えていたし、
それなら、と飲み込んだのが最後。
安「ずっと会いたかった。せっかくだしお茶でもしない？」
『…いや、やめとく。』
安「……そう」
今更どうこうはないし、
お互いが元気に過ごせてるならそれでいい。
そう思ったのだけど、
安「私、良規くんの学校に赴任することになったから」
その言葉に思わず足を止めた。
振り向いてみた彼女の表情からは、
何を考えているのかはよくわからなかった。
安「臨時だけど、1ヶ月間同僚になるから…よろしくね？」
『そっか…よろしく。困ったこととかあれば言ってな』
安「……変わらないね」
『え？』
安「そういう優しいところ。」
そう話す彼女は懐かしそうにしながら、
…どこか嬉しそうでもあった。
安「私もね、あの時から変わってないの。…変わらずにここまできた。」
『……それ、どういう意味？』
安「…やり直したいの。私たちのこと」
『…悪いけど俺は、』
安「待って！」
そのつもりがないことを伝えようとすれば、
答えをすぐに出さないでほしいと言われる。
けどあの時、そっちから別れを切り出したのに、
どうして今更。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふぉんと
| 作成日時：2022年12月27日 22時
