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「すいません、これは不可抗力で…！」
『は？』
「前に俺も好きだからやめろって…」
言ってましたよね…？と弱々しく聞かれて、
何のことだか分からなかったのが一気に思い出す。
確かに、そんなようなことを言った記憶あるな…。
それを皮切りに、そのほかにも色々と蘇る。
始まり方が最悪だっただけに、
どこか強く当たってたけど、
思い返せば最初に歩み寄ってくれたのは神崎の方からで。
次は俺の番、なのか…。
ふと前を見ればまだ律儀に耳を塞いでいて、
それを見てたらなぜか心臓がグッと痛くなった。
『……そんなんせんでええって。』
「……？」
あー…聞こえてないなこれ。
仕方なく腰を上げて神崎の両手を掴んで耳から離すと、
驚いたのかギョッとしていて。
けどそれに構うことなく真っ直ぐに目を見る。
「っ！？(何事！？)」
『悪かった、ガキみたいなこと言って。』
「へ……」
『やめろとか、もう絶対言わんから。やからそんな耳塞ぐとかせんといて。……好きなんやろ？この曲。』
「……はい。」
『……俺も好き。』
そう言うと神崎は少し驚きながらも、
やっと明るい表情になって
「…そうなんですね。」
と柔らかく笑った。
その顔を見ていたらさっきよりもっと心臓が痛くなって、
慌てて両手を離して自分の椅子に戻る。
そのままバクバクいってる心臓に手を当てる。
『(待て待て、落ち着け俺……)』
こいつはこの曲のことを好きって言ってて、
だから俺もこの曲が好きって答えて、それだけ。
ただそれだけのことやんか！！！
『っ、ご馳走様でした！！』
とにかく落ち着かなくて、
自分でも驚きの吸引力で残りのそばをすすって
慌てて立ち上がる。
お店の人に押し付けるようにお金を払って
急いで店の外まで出た。
『なんでこんな疲れなあかんねん……。』
やっぱり俺はラーメンの方がお似合いなんかな…
と隣を見ながらつくづく思った。
あとあの占いも妙に当たるし腹立つし…
もう見るのやめよ、と心に決める。
だけど自分でもよく分からないが、
心の中が少しだけ軽くなったような気がした。
# リーダーの一歩 fin.
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作者名：ふぉんと
| 作成日時：2024年1月3日 22時
