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『あ、あと最近身体絞ろうかなぁとか思ってて！蕎麦ってダイエットとか健康食の代表的なやつやし、それやったらいつも行く店の隣にあるやんと思って。それで入ってみたけど、結構落ち着いてて綺麗やな〜。隣のラーメン屋は男客ばっかでもうむさ苦しくて、…』
「……」
あかん。俺しか話してない。
間が怖くて思いつくままに喋ってたから
喉もカラカラでごくごくと出された水を飲む。
思えばこんな風に向き合って話すなんて、
ましてやメシ食うのなんてもちろん初めてで。
だから、
「はい月見とかき揚げ、お待ちどうさまでーす！！」
そのタイミングで頼んでた蕎麦が運ばれてきて、
正直めっちゃホッとした。
それと同時に少しがっかりもする。
出会ってすぐの頃よりは
多少マシになったと思ってたけど、
それは俺の気のせいかもしれへんな…
と、ぼーっと考えていると
「あ、あの…」と正面から声がした。
「かき揚げ、半分いりますか？」
『は？』
急な話にポカンとしているうちに、
神崎がまだ手をつけていないかき揚げを
小皿に半分乗せて、どうぞと差し出してくる。
一方の俺は流れが分からなすぎて焦る。
『なんで！？』
「ここのかき揚げ、大きくてたまに胃もたれするんで…あとそんな目で見られたら食べづらいですし、」
『え、俺そんな見てた？』
「はい、親の仇くらい。」
『……それは、すまん』
多分無意識に運ばれる様子を目で追ってたんだろうけど、
それを説明するのもなんだか微妙だし。
と、また悶々としていると神崎がハッとして
「私のやつなんて嫌ですよね…」と言うから、
『ちょっ、待て！もらうから！！』
「えっ、あ…じゃあはい、どうぞ。」
『おう！』
咄嗟に全力で答えてしまい、
めちゃくちゃかき揚げ食べたかったやつみたいになる。
何がしたいんや俺は…。
軽く自己嫌悪しそうになるけど
もう諦めて月見そばをすすり始める。
するとその時だった。
「『あ、……』」
お店のBGMから聞き馴染みのある曲が流れてきて、
思わず目線を上げると神崎とも目が合う。
それは俺とこいつの共通で好きなアーティストの曲だった。
すると突然、焦ったように神崎が両耳を塞いだ。
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作者名：ふぉんと
| 作成日時：2024年1月3日 22時
