其の八【茶会・番外編(ほの甘)】三成 ページ8
「行っちゃいましたね、、」
三「ああ」
二人の背中を見送ったあと、Aと三成はしばらく夕日に包まれる暖かな空間に立ち尽くしていた。
三「寂しいか」
「へっ…！？」
唐突にそう声を掛けられ、Aは素っ頓狂な声をあげた。
寂しいというのは、茶会が終わったことに対してなのか、幸村と兼続の二人が帰ってしまったことに対してなのか。
「会が終わっちゃったのは残念ですけど、殿が居ますから」
三「…！」
三成は一瞬驚いたようにして、
それから、ふいっと顔を背けた。
三「俺たちも戻るぞ、城へ」
「はい！」
Aを見つめる三成の表情は、暖かな夕日を浴びているからなのか、柔らかく映った。
ーー
薄暗くなった竹林を歩いていると、バサバサっと草影で何かが動く音がした。
思わず驚いてビクッとしたA。
三「！…狸だな」
「あ、、本当ですね」
三「フッ…戦場では勇敢なのにな」
「すみません；暗いのは苦手で…」
そう口にしてからAはしまったと思った。主君の前で家臣として情けない姿を晒してはいけない。
Aは自分を律して、背筋を伸ばした。
その様子を三成は横目で見た。
三「怖いのなら、掴まっていれば良い」
「えっ…」
てっきり呆れられたかと思ったAは、思わぬ三成の言葉に戸惑った。
(まさかっ…とっ、殿の腕に掴まって良いってこと！？)
三成は無言だが、目の前には差し出された左腕が。
どうやら間違いなかった。
ここで断るのもどうかと思い、三成の言葉に甘えることにした。
「では、殿のお言葉に甘えて…」
三「好きにするがいい」
Aは遠慮がちに三成の着物の袂を掴んだ。
その途端に先ほどまで感じていた暗闇への恐怖心は一切消え去り、安心感で満ちた。
それと同時に、掴んだ袂から伝わってくる触れるか触れないかの距離感に緊張した。
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作者名：まりる | 作成日時：2022年3月13日 21時
