其の六【茶会�◆杁船肇螢� ページ6
「そう言えば、お茶の供になるかと思ってこちらをお持ちしました」
Aは三成の前に風呂敷袋を差し出すと、結び紐を解いた。
「城下町にある甘味処の餅です。味はよもぎと餡の二種でございます」
三「ほう、気が効くではないか」
三成は機嫌を良くしたように口角を上げた。
そしてすぐに幸村の方をちらと見た。
お前は何か無いのかと言いたげに。
幸「申し訳ありませぬ。この幸村、ただで茶を頂きに来たわけでは決してございませぬが、無骨者ゆえ気が回らず…」
三「それは言い訳だ」
「ま、まぁ殿；そう仰らず」
三「A、お前はどちらの味方だ」
三成の返しに言葉を詰まらせたAだったが、三成が本気で腹を立てていないのは見るに明らかで、戯れのような穏やかな空間に心地良さを感じた。
兼「皆！！待たせたな！！！」
幸「おお、兼続殿！待っておりました」
勢いよく障子が開け放たれ、先程話題にも出ていた兼続が颯爽と登場した。
三「おい馬鹿、勢いよく入って来るな。茶に埃が入るだろう」
今度はあからさまに三成は不機嫌そうにした。
だがそんな三成など気にする様子もなく、兼続はAが持ち込んだ餅に視線を移した。
兼「これは美味しそうな餅だな。実に茶と合いそうだ！」
三「おい貴様は何か無いのか」
兼「私か？金平糖くらいしか持ち合わせは無いが…」
三「構わん、出せ」
かなり強制的だったが、兼続は全く抵抗する事なくあっさり従った。
ーー
茶と菓子の準備が整い、Aは懐紙を手に取ると和菓子をそれぞれ盛り付けた。
幸「三成殿、では頂きます」
「いただきます」
三「…好きにするが良い」
まずは薫りを堪能してから、茶を口に運んだ。
抹茶の渋みを残しながらも、口当たりは良いすっきりとした味わいだった。
「すごい、、とても美味しいです！」
三「…ふん」
態度こそ、鼻で笑っている三成であったが、Aの心底感心した姿に表情は綻んでいた。
兼「この餅も美味いな！」
幸「そうですよね！」
Aの持ってきた餅も、兼続と幸村の二人に大好評だった。
兼「ぜひ越後にも土産物として持ち帰りたいものだ。A、どこで手に入るのか教えてくれないか」
「はい、良いですよ。今度案内します！」
そんな二人のやり取りを黙って聞いていた三成が、小さく「くだらん」と呟いた。
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作者名：まりる | 作成日時：2022年3月13日 21時
