其の三【愛情の裏返し・続】三成 ページ3
三「…すまなかった。」
「!!」
まさか三成の口から謝罪の言葉が出るとは思いも寄らず、Aは瞠目した。
三「その、お前の気持ちを知らずに俺は…」
「殿…そのように仰らないでください。私こそ、ご無礼をお許し下さい。」
三「い、いや」
憎まれ口を叩かれる事に慣れている三成は、Aのように素直な言葉を述べる者に対しての接し方が不得手であった。
三「理由が聞きたいと、言ったな。」
「!…はい」
ずっと自分が思い倦ねていた事に対して、
ついに三成が応えてくれるかもしれないー。
Aは期待感から、三成を一心に見つめた。
三「あまり見つめるな。言いにくかろう」
「ぁ、すみません;」
三成は軽く息を吐くと、
意を決したように口を開いた。
三「心配なのだよ」
「え…」
三「俺は、お前を戦場で失うのが怖い…」
紡ぎ出た言葉は、普段の三成からは到底かけ離れたものだった。
そして気付かされたーー。
突き放したような物言いの裏には、
三成の優しさがあったのだ。
「殿…」
三「分かったら、もうこれ以上出陣するなどと申すな」
「は、はい…」
三「それで良い」
三成の表情がふっと柔らかくなった。
「あの、ありがとうございました。心配してくれて」
三「っ…馬鹿。豊臣家安泰の為だ。」
「はい。そうですね!」
文机に置かれた巻物を手に取り、三成はそれらをAへ差し出した。
三「ここに今後の政策について纏めがある。目を通してくれ…お前の意見も聞きたい」
「承知しました」
巻物を受け取ると、用件が済んだと解釈したAは一礼してその場を後にしようとした。
三「待て」
「?」
三「今度茶会をする」
「!」
三「参加は任意だが…」
「ぜひ参加させてください!」
三「っ!」
三成はきらきら輝くAの瞳に吸い込まれそうになった。
(全く、童のような反応をするやつだ…)
三「…ふっ、期待しておけ。格別な茶を用意してやる」
「楽しみにしております!」
Aは心躍らせながら、巻物を抱え自室へと戻った。
足並みは行きとは比べ物にならないくらい軽い。
それはきっと、三成の秘めたる優しさに触れられたからだろうと感じた。
Aにとってあの時間は、間違いなくかけがえのない瞬間であった。
それと共に、自分には後にも先にも仕える主君はこのお方しかいないと確信したー。
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作者名:まりる | 作成日時:2022年3月13日 21時