【君思ふ】戦国無双(短編夢小説) (ページ17)

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其の十七【果たされぬ約束(悲恋)】幸村ページ17

宵闇が迫るころ、
逢瀬は終わりを告げようとしていたーー。

「離れたくない」

幸「A殿…」

こんな事を言っては、幸村を困らせてしまうだけなのは分かっている。

だけど溢れ出る思いは止まらない。

私たちが生きる世は、明日も分からぬ戦国の世なのだ。

ここで別れたとして、またいつ会うことが出来るだろう。

或いはもう二度と会えなくなるかもしれない。

「幸村…私、不安だよ」

幸「！」

「離れたら、もう二度と幸村に会えなくなるんじゃないかって…」

頬を一筋の涙がつたった。

しかし涙は溢れ落ちることなく、幸村の手によって優しく拭われた。

幸「大丈夫。」

「！」

幸「また貴女とこの場所で会うと誓いましょう」

「幸村…」

幸「必ず」

真っ直ぐな決意の篭った眼差しだった。

この真っ直ぐな瞳が、私は大好きなのだ。

「信じるわ」

幸「…ありがとう」

どちらからともなく唇が重なった。

僅かでも希望の光があるならば。。
信じて生きるしかないーー

＊＊

幸「少し歩きませぬか？」

不意に幸村がそう提案した。

きっと寂しがった私を慮ってくれたのだろう。

幸村の優しさに甘える事にした。

ごく自然に幸村が私の手を取った。
安心する大きな手。

この手でいつも守ってくれた、、

この手を、二度と握れなくなるのが怖いーー。

「幸村…お願い。大阪城には行かないで」

心の底からの願いだった。

どうか届いてほしい。

私は握る手に力を込めた。。

幸「……A殿」

直感的だった。

幸村の心は既に決まっていて、それが私が望む答えとは別の決断なのではないかとーー

そう感じてしまった。

真田幸村という人は、
日の本に誇るべき兵(つわもの)なのだ。

その信念を持って貫く幸村の気概は、
本当に心からの尊敬に値する。

だがそういった肯定的な感情だけでは片付けられないほど、一個人として幸村を思う気持ちが強かった。

「ーー行かないで」

幸「A殿、私はここにいます。貴女の横に…貴女のそばに…だから」

幸村の言葉は続かなかった。

だけど、

(必ず戻ってくるから。)

そんな心の声が、聞こえた気がした。