【君思ふ】戦国無双(短編夢小説) (ページ14)

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其の十四【弁当(ほのぼの)】左近ページ14

Aは厨で大量の弁当を作っていた。

全ては戦で疲れた兵士たちに元気になってもらう為に。

作られた握り飯や干し芋は、次々に笹の葉に包まれ並べられていく。

左「お、こりゃすごい」

関心した声をあげた左近が入ってきた。

「左近殿！」

Aは気づいて会釈する。

左「外で兵卒の間で噂になってますよ、Aさんの弁当が食えるって」

「！有り難いことです」

非力な自分にはこれぐらいしか出来ない。

少しでも力になれているなら、有り難い話だとAは心から思っていた。

左「俺だって毎日食べたいぐらい、好きですよ」

左近はニヒルな笑みを浮かべそう言った。

「そんな、勿体ないお言葉です」

左(ありゃ；通じなかったか、、)

予想した反応と違い、思わず苦笑いする。

左(Aさんの前に遠回しな物言いは通用しない…と。)

そんな思いあぐねた左近の前に、変わり種な握り飯が差し出された。

左「！これは？」

「…試作品なんですけど、良ければ味見して頂けませんか？」

左「良いんですか？俺で」

「はい、食事処に通い慣れた左近殿なら、きっと適切な助言を下さるかと」

左「ハハッ、なるほど。こりゃ高い期待値ですな。どれどれ…」

手にした握り飯を口に運んだ。

一口、二口、、

Aが緊張した面持ちで見守る。

左「…うん、美味い。ただの握り飯じゃない、何か混ぜてるんですか？」

「はい。茹でた山菜を味噌で和えて、米に混ぜてみました。効率よく栄養が取れるかなと思って…」

左近は黙々食べ進め、あっという間に一つ平らげた。

左「良いアイデアですよ。米と野菜がよく合ってる」

「！良かった…」

Aがホッと安心したように、表情を緩めた。

その様子に左近も穏やかな気持ちになる。

左「これだけ栄養価の高い握り飯を食べれば、兵の士気も益々高くなりますな」

「左近殿、付き合ってくれてありがとうございました。」

左「とんでもない。むしろ、俺の方が礼を言うべきだ。こんなに美味い飯を誰よりも早く食べさせてもらったんですからね」

「きょ、恐縮ですっ」

Aはぺこぺこっと頭を下げる。

左「貴女さえ良ければ、また作ってください。味見役はいつでもここにいますよ」

「はい、よろしくお願いします！」

元気に挨拶すると、Aは再び弁当作りに励み始めた。

左(健気なもんだ…いつか味見じゃなく、俺の女房としてずっと飯を作ってもらいたいね。)

左近はそう思いながら、厨をあとにした。