【君思ふ】戦国無双(短編夢小説) (ページ12)

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其の十ニ【雪溶けの恋慕・番外編】ページ12

※幸村side

Aと遠征の任務に出ていた。
早くても二日はかかるため、道中に民宿を探さねばならなかった。

毎回遠駆けには気を遣う。

いくら気心知れてる間柄とは言え、男女が同じ床で夜を明かすなど断じて御法度だ。

だから必ず部屋は二つ借りるよう民宿にはお願いしていた。

Aは初め、自分が部屋を一つ頂くなど贅沢だと話してきた。

私は意見に理解を示しつつ、疲れをしっかり癒してほしいと説得した。

「おやすみなさいませ」

幸「ああ、おやすみ」

閉じられた襖越しにひと言そう交わし、眠りについた。

その夜、嫌な夢を見た。
Aが居なくなってしまう夢。

悪い夢のせいで、夜明け前にも関わらず目が覚めてしまった。

きっとAはまだ寝ている。
起こさぬよう静かにしていよう。

その時だった。

「幸村さま…」

幸「！」

隣の部屋から自分の名を呼ぶ、Aの呟くような声がした。

寝言かとも思ったが一応返事をしてみた。

幸「呼んだか？」

「ゆっ幸村さま、起きていらっしゃったのですか…」

動揺した少し上擦った声に、思わず笑みが溢れた。

そして起きているならと今朝見た悪い夢の話をした。

「幸村さま、そばに行ってもよろしいですか、、」

話し終えた矢先、Aがそう言った。
どう答えるべきか迷った。

今この状況下で二人きりになって良いものなのだろうか、、

思考の末、招き入れることにした。

Aは私の話を聞いて気遣って言ってくれた。
ならばこちらも応じるべきはず。

襖が開いてAと視線が交わった。

息を飲んだ。

見慣れた甲冑姿ではない、無防備な夜着姿が扇状的だった。

朝冷えする室内。
掛け布をAの背中から掛けてあげた。

それから暫く他愛もない話をした。
Aと過ごす時間は、不思議と今が乱世だと忘れるようだった。

共に乱世を越えられたらーー

Aが手渡した掛け布を畳み、それを受け取ろうとした時、思わず手が触れた。

幸「！すまぬ」

「いえっ！」

お互い反射するように手を引っ込めた。

ほんの一瞬触れただけだが、その手の小ささとか細さに驚いた。

守ってあげたいーー

胸の奥にそんな感情が沸々と湧き上がってきた。

私は立ち上がったAの腕を、考えるよりも先に掴んでいた。

幸「そなたを愛している」

もう込み上げた思いを飲み込むことは出来なかった。

私はまっすぐにAを見つめ、
我が胸の内を告げたーー。