其のニ【愛情の裏返し】三成 ページ2
Aの前には無言で足早に歩く主君の姿。
この容易に話しかけられない雰囲気には、なかなか慣れない。
しかし今回の件に関しては、Aはどうしても納得がいかなかった。
「あのっ…殿!」
意を決して、主君の背中に声をかけた。
三成の足がぴたりと止まり、振り返らずにAを後ろ見た。
「此度の戦、どうして私は出陣させてくれないのですか」
三「…その話か。言ったであろう、今回お前は必要ない」
「っ!」
三「それだけの話だ」
「……」
必要ないーー
その言葉がAの心に抉るように刺さった。
だがここで引くわけにはいかない。
「何故です!理由を話していただけなければ納得行きません!」
三「……」
三成が今度は体勢を変え、Aと向き合うように立った。
腕組みをし、視線が交わる。
「っ!」
三「俺に理由を述べよと命令するつもりか?」
「めっ命令などしておりません!」
三「ならば引け。しつこいのだよ」
Aは悔しさから、拳をぎゅっと握った。
「私は、殿の役に立ちたいのです…」
三「……」
「ただそれだけなのに…っ」
伝わらない想いが、涙となって俯いた瞳から溢れて地面へこぼれ落ちていく。
三「っ…お、おい;」
流石にこの図はまずい。
誰かに見られ変な誤解を招いたら実に厄介な事になるだろう。
三成は一先ずAの手を取り、早急に居室へ引き込んだ。
ーー
しかし引き入れたはいいが、
二人の間をしばらくの沈黙が流れたー。
だが先に口火を切ったのは三成であった。
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作者名:まりる | 作成日時:2022年3月13日 21時