【109】・気になる馴れ初め話。 ページ43
『Noside』
沢山ある商品の中、ナツメは一つだけ見覚えのある化粧品を見つけた。
ナツメ「これって、あの時の.....」
昨日、Aが着付けてくれた時に塗ってくれた笹色紅(リップ)が売られていた。
ナツメ「ここにも売ってるんですね!」
A「何たって、旅館の人気商品ですから。着付けの体験をした女性の方々が笹色紅を気に入ってくれて買ってくださるんです」
笹色紅の箱を一つ手に取ったナツメは、暫くジーッと見ていた。
ナツメ「パッケージもロゴも全部可愛い!」
何かを決めたように顔を上げた。
ナツメ「見て回るだけのつもりだったけど、やっぱり買います!めっちゃ可愛いですし!」
A「....!気に入ってくれて嬉しいです」
嬉しそうに笑い、Aは会計の所へ行こうとする。
ナツメ「あっ、もう1つ買いたいものがあるんです!さっき見てた香水も買いたくて!」
A「それでは、先程の所に戻りましょうか」
ナツメ「はい!」
手に取った笹色紅の箱を持ち、再び香水が置いてある棚に向かった。
ナツメ「そういや、Aさんの近くに居ると少しだけエンマ様と同じ匂いがします」
A「よく言われます。あれだけ近くに居られたら、匂いも移りますよ....ちょっと困りますけど」
呆れた感じで笑みを浮かべていた。
ナツメ「でも、エンマ様に凄く溺愛されてますよね。馴れ初め話とか聞きたいです!」
A「馴れ初め話ですか....」
戸惑った表情のAは、それを言おうか迷っていた。
A「(誰が聞いてるか分からないし、あまり詳しく話せないな....)」
悩んだ末、こう答えた。
A「生前の事が馴れ初めの切っ掛けになりますね。私達は、“妖怪”に生まれ変わってから本当の恋人になったので」
人間だった時のAとエンマ大王(イツキ)の出会い。
そして、二人の間に恋が芽生えた瞬間。
一緒に向こう谷駅へ行った日、あの時には既に好意を寄せていて互いのことが気になっていた二人。
ナツメ「ロマンチックですね〜!それで、どっちから告白したんです?」
馴れ初めが気になるナツメは、興味津々に聞く。
A「大王様の方から....ですね」
シンが彼の背中を押さなければ、自分が先に好きだと伝えようか考えていたA。
その後、ナツメは桜の匂いがする練り香水と笹色紅を買って化粧品店を出た。
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作者名:カナミ | 作成日時:2024年2月7日 19時