【69】・揶揄い上手な先輩。 ページ3
『Aside』
従業員室に向かった私は、また女将さん達に揶揄われながら仕事内容や宿帳を確認する。
A「(あっ、今日は八鳳さんと一緒だ....!)」
仕事が一緒なのは滅多に無い事だから、喜んでいると後ろから肩を数回叩かれる。
振り返ると、笑みを浮かべた八鳳さんが居た。
八鳳「昨夜は何処に行ってたのかな?」
A「な、何でその話になるんですか!」
八鳳「部屋に鍵が掛かってたから。Aのことだし、エンマ大王の所でしょ?」
A「分かってるなら聞かないでくださいよ...」
再び、昨夜の事を思い出して顔が熱くなる。
エンマの表情や、身体に触れた手の感触、熱を孕んで欲望が剥き出しになってる瞳、低い声で私の名前を呼ぶ彼の姿.....
恥ずかしいという感情も忘れて身を委ねていた。
A「(ダメダメ....仕事前なんだから!)」
私は首を横に振った後、準備している八鳳さんの方に目線を向ける。
八鳳「私、妬けちゃうな」
A「えっ?」
八鳳「エンマ大王だけ、素のAが見れるっていうかそれが正直羨ましい。可愛いアンタを独り占め出来るんだし」
初めて聞いた本音に驚く。
A「八鳳さんが嫉妬って意外ですね」
八鳳「そう?結構、嫉妬深い方だと思うけど」
A「あの大王よりはマシです。ちょっとした事でも嫉妬するんですから」
そして、八鳳さんと一緒に従業員室を出た私は静かな廊下を歩く。
八鳳「そういえば、エンマ大王とか一緒に旅館へ来た人間の子達は何で食事処に行くんだろう」
確かに、旅館では仲居さん達等が部屋(客室)に行って食事を提供する事が多い。
わざわざ、食事処に行かなくても済む。
A「多分ですが、別々の部屋なので食事処に行って食べてるんだと思います。あとは、食事処の方が色んな種類のメニューを選べるので...ナツメちゃん達のことも考えてあるかと」
部屋に運ぶ食事は、殆ど和食だし決まったコース料理を出すから選ぶ事が出来ない。
中学生とは言っても子供だから、あまり慣れてないと思ったエンマが気遣っているんだろう。
八鳳「流石、彼女なだけあるね。良く分かってる」
A「本当かどうかは分からないですよ」
そんな話をしてる私と八鳳さんは、お客様に提供する料理を運ぶ為に食事処へ行っていた。
【70】・痛む腰に耐えながらの仕事。→←【68】・子供っぽい彼の甘え方。
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作者名:カナミ | 作成日時:2024年2月7日 19時