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【77】・初めての体験。 ページ11

『ナツメside』
更衣室に来た私は、衣裳敷を敷いた上で着付けを行う。
先ずは足袋を履いて、肌着をつけて補正する。

ナツメ「あの...着付けって、お金掛かりますか?」
A「高校生までは、無料で着付けを行ってます。卒業式や成人式等は別ですけどね」

喋りながらも手を止めないAさん。

ナツメ「(仕事着が着物だから慣れてるのかな)」

補正した肌着の上から長襦袢を着た後、選んだ着物を着る。

A「知っていますか?姫小百合の花言葉には、『飾らぬ美』や『好奇心の芽生え』というのがあるんですよ。まさに、ピッタリだと思います」

ふと鏡を見ると、綺麗に微笑むAさんと目が合って少し逸らす。

ナツメ「わ、私よりもAさんの方が似合ってます!」

『飾らぬ美』なんて、Aさんの方が絶対合ってる。

A「嬉しい事を言ってくれますね」

フフっと笑うAさんは、慣れた手付きで私に着物を着せてくれた。

A「可愛いですよ、とても」

鏡で自分の姿を見てみると、目を疑った。

ナツメ「自分じゃないみたい....」

着物を着てるだけで、こんなに変わるなんて思っても無かった。

A「次は、髪型と御粧しですね」

鏡台の前に行くと、一度解くとAさんが髪を結ってくれる。

ナツメ「こういう鏡台って、まだあるんですね」
A「そうですね」

と言うと、Aさんは続けて話し始めた。

A「女将さんが嫁入り道具として貰った鏡台を此処に譲ったんですよ。どうせなら、若くて可愛い女の子に使ってもらいたいと言ってました」

あの柔和な顔立ちの女将さん....何か、色々と太っ腹だなぁ。
髪を結うと鼈甲の簪を挿してから、引き出しを開けて何かを取り出した。

ナツメ「それは....?」
A「“笹色紅”と呼ばれるものです。現代で言うと、リップみたいなものですよ」

微かに水を含んだ筆を器に滑らせると、綺麗な紅色に変化した。

A「少し、唇を突き出していただけますか?」

言われた通りにして、唇に擽ったい感触が当たる。
その後、白粉と紅を混ぜた頬紅を塗ってもらって完成したみたいだ。

A「終わりましたよ。鏡で見てみてください」

目を開けてみた瞬間、さっきとは全く違う自分の姿が鏡に映ってる。

ナツメ「わぁ....!」
A「何倍も可愛く....いや、美しいですよ」

そうして、私はAさんに手を貸してもらいながらも更衣室から出た。
初めて和風っぽい化粧もしてもらって、夢心地な気分だった。

【78】・愛おしい恋人。→←【76】・幻想的な呉服屋。



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作者名:カナミ | 作成日時:2024年2月7日 19時

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