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小話9 ページ34






百side



ーーーAちゃんがオレのことを、百瀬と呼ばなくなったのはいつからだろうか。



たまにふと、そんなことを考えてしまう。そういうことを考えるときは大抵、Aちゃんと千の2人が目の前にいるときだ。例えば、今日みたいに



「どうしたの百くん。お疲れ気味?大変だねえ…お酒(コレ)飲んで忘れな?」


「ねえ、Aちゃん」


「なに?」


「何で、百瀬って呼んでくれないの?」



オレがそう言うと「え、もう酔ってた?」とオレの顔を覗き込むAちゃん。一方千は「確かに。僕も名前で呼んでもらったの少ししかない」と関心を示していた。



「今さら百瀬、千斗って呼ぶのも…。でも千は最初から千か千くんだったじゃん。百くんは百瀬だったけど」


「何で?何でオレの呼び方変えたの?」



そう食い気味に聞くと、怪訝な顔をしたAちゃん。それでも気にせず、Aちゃんの顔をじっと見つめると「…ちゃんと線を引こうと思ったから」とため息混じりに言う。



「線?」


「そう。一般人とアイドルの線」


「オレたちの仲なのに?」


「私たちの仲だから、どう呼ぼうか迷ったよ」


「ファンに誤解されたくなかった、とか?」


「あーいや、そんなんじゃなくて」



「ーーー離れてくから」



そう言ったAちゃんを、抱き締めたくなった。本当は寂しかったのだろうか、不安だったのだろうか、それとも、心配させてしまっていたのだろうか。
千はそんな気持ちを一瞬で察して、Aちゃんの頭を撫で始めた。



「僕たちが離れてくって思われてたなんて存外だ。僕たちの方こそ、いつAがまたいなくなるのか心配だったよ」


「えー、そう?私ここにいるじゃん」


「じゃああの時なんで何も言わず姿を消した。万に続いてお前も。1人にされた気分だったよ。百がいなきゃ死んでた」



するとAちゃんはフッと視線を下にして「色々あったの」と言った。オレはそんなAちゃんの姿に耐えられなくて、抱きついた。



「言ってよっ……!オレたちが頼りなかったのは分かるけどさあ!Aちゃん本当に消えてきそうなんだもん!何かあったら離れてきそうだもん!オレ、オレ…いっつも不安で仕方ないよ…!?」



酔っているせいもあるのか、オレから溢れ出す涙を、Aちゃんは親指でぬぐった。



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作者名:ミズキ | 作成日時:2020年1月18日 19時

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