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小話8 ページ33




※若い頃のお話です。


千side



百とAの家へ行くことになって、家に入ろうとした時だ。中から「ふざけんな!!!私がどんだけ…!!」とAの怒号が聞こえてきた。

百と慌てて玄関のドアを開けると、そこにはAの他にもう一足靴があった。ああ、彼氏と喧嘩しているんだ。止めなきゃ、と思い2人でバタバタと中に駆け込んだ。



「っA…!落ち着け!!」


「離して!!コイツ一発殴んないと気が済まない…!!」



すると流石柔道をやってただけある。僕たちの腕をすり抜けて彼氏を殴った。しかもグーで。その後、テレビではピー音が流れるであろう言葉を大声で言い始めた。



「ってぇ……だから、もうこんなことしないって言ってんだろ。A、2人で落ち着いて話をしよう」


「する訳ないだろ!!死ね!!!クソ男!!」



余程酷いことがあったのだろう。僕も百もこんなAは見たくなくて、彼氏の方に一回帰るように伝えた。すると僕たちを睨んだ彼氏は、舌打ちをして玄関へ向かった。



「Aちゃん!分かる!?百瀬と千!!」


「もも、せと、ゆき…」


「今度は何があったの…」


「………ここで、他の子と寝てた、からっ、ぅ」



ヘタりと床に座って大泣きし始めるA。コイツは何でこう、毎回こんな男たちに惚れるのだろうか。Aは泣きながらも、僕たちに私はアイツのこと信じてた、とかあの彼氏に対する思いを吐くように言う。



「お前が誰よりもあの人のこと好きだったのは、僕たちでも見ればわかる。……殴った方の手見せて」


「Aちゃん、女の子が泣きながらあんな言葉言わないでよ……オレたちが辛くなっちゃう」



「………ごめんなざい」


「泣かないで、Aは悪くない」


「……私の、なにがだめだったんだろゔ…っふ」



そう悲しげに言うAをみて、「Aちゃん…」と百も泣きそうになる。コイツが彼氏と別れるところは散々見たが、今回ばかりは心が痛むし、あの彼氏にも怒りが湧く。




「A、もう殴るのはやめろ」


「……っごめん」


「…僕たちが、代わりに殴ってやるから」


「そうだよ。Aちゃん、オレたちにもAちゃんの痛みとか怒り、共有させてよ」


「ーーー僕たちは、お前のアイドルなんだから」



そう言うと、顔を両手で覆ってまた泣くA。Aがここまで僕たちに弱さを見せたのは、今日が初めてだった。



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作者名:ミズキ | 作成日時:2020年1月18日 19時

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