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小話7 ページ13




悠side



最悪、最悪、最悪。



「(何でだよ…っ)」


「(やっとAには心開けてきたと思ったのに。……信用してたのに)」


『……アンタ、私の何を知ってるの?』


「っクソ…」



さっきのAの声、目、口ぶりが頭の中を駆け巡る。分かってるんだ、心の底では。間違えてる。やめなきゃ、って。



『…八つ当たりでしょう?』



ああ、そうだよ。図星だからこんなにムキになってるんだ。九条に俺が捨てられて、アイツが捨てられてない。その事実に対する腹いせだ。

Aは言葉遣いも悪いし、乱暴。でも俺からしたら、ヒーローみたいな女の人。九条に俺のことを自慢しているところをみて、思った。



ーーこの人は、俺を見てくれてる。



「また、捨てられんのかな」



そう声に出して、自嘲する。なんて弱々しい声なんだろう。本当にAのことを信頼している、そのことを自覚して、涙が溢れた。でも、雨に濡れているからバレてないんだろう。

今更、何を後悔しているのだろう。俺は、やりきらなきゃ。断ち切らなきゃ。そうやって道の端に座り込んだ。その時



「悠くん!!!!」


「歩くの速すぎ…。ほら、車戻るよ」


「なんで、」



なんでだよ



「なんで俺のこと」


「はあ?ほっとけないでしょ。あーもうびしょ濡れじゃん!」



必死な顔して走ってきたAは、ハンカチで俺の顔を拭って、俺の腕を掴んで立たせた。「風邪ひいちゃう風邪ひいちゃう。」そう言いながら自分のスーツのジャケットを俺の頭に被せた。



「私も傘忘れたから、これで勘弁して。…あと」


「ごめん、キツいこと言って。私も悠くんのこと何も知らないくせに一丁前に説教しちゃってたよね。ごめん」


「…俺も、ごめんなさい」


「ちょちょちょ、泣かないで」



今度は指の腹で俺の涙を拭った。まだまだ出てくるそれにAは笑って、「赤ちゃんみたい」と言った。



「ガキ扱いすんなよ」


「そうだね、ごめん。ほら、戻ろう」


「…ん」



車の中に戻ると、雰囲気はよくなった。トウマがあたふたしていたが、いつものように鬱陶しくは感じなかった。







次から短編入ります、、、

55 マネージャーの力は計り知れない編→←小話6



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作者名:ミズキ | 作成日時:2020年1月18日 19時

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