四十一話 過去編 すれ違った決意 ページ46
隼人「ねぇ、ちゃ……っ」
辺りに染まる血の溜まり。
姉が、腹を刺されたのだ。
納戸からのぞくと、ぴくりとも、姉は動かない。
すると、村人達はあろうことかズカズカと、土足で部屋へあがりこんだのだ。
『…ついに妖怪を倒した!倒したぞ!』
『この際だ、金目のものも貰っていっちまおう』
『よし、漁るぞ』
そうして、村人は散り散りに姉弟の部屋へ散っていった。
その瞬間、弟はゆらりと納戸から出て、
赤く染まる姉を抱き起こした。
「……っ、は、隼人………」
隼人「あ、ああ……ね、姉ちゃん……っ、」
「だい、じょうぶ……少しお腹…斬られちゃっただけだから……しばらくしたら、治る……」
隼人「ちくしょう、ちくしょう……!!」
弟は、はらはらと涙をこぼした。
口もとは血がベッタリとついたまま、力なく姉は笑った。
「はやと」
「ごめんね」
ふっ、と姉は目を閉じた。
その瞬間−−−
弟の中で何かが、切れた。
……何で、姉ちゃんが謝らなければいけない。
何で、鬼から村人を助けてやったのに、こんな仕打ちをされなければいけない。
何で、住みかを勝手に荒らさなければいけない。
何で、
僕達が、こんな目に合わなければいけない。
おのれ
あんなに戦った姉を、災厄呼ばわりか。
あんなに住みかを追いやられたのに、さらに出ていけというのか
この、恩知らず
醜い
汚い
我らを【災厄】言うのならば
望み通り、災厄になってやる
我らを【鬼】と云うならば
望み通り【鬼】になってやる
春を待つ、我らの邪魔をすると云うならば
切り刻んで
真っ赤な花冠をつくってやる
永遠に、死んでいけ
愚かな人間共
−−−−−−−−−−−−−−
「……!!は、はや、と……あんた…」
気がついた姉は、倒れたままぎょっと目を見開いた。
ドシャッと、目の前に置かれる赤黒い何か。
それは、切り刻まれた人間の生首達だった。
「こ、これ、さっきの、村人……隼人、な、なにを……っ」
息を荒げながら、弟を見上げた。
まさか、うちの弟が、そんなことを……
しかし、弟の尾から出たノコギリの刃物が血で染まって、すでに事済んだことを証明した。
隼人「……皆、僕が殺した」
ニタァ、と笑う弟の姿に、
「あ、ああ……っ…」
姉は、悲しみとも言えない複雑な涙を流した。
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作者名:雪ん娘☆ミ | 作成日時:2016年8月25日 22時