検索窓
今日:7 hit、昨日:5 hit、合計:93,606 hit

四十一話 過去編 すれ違った決意 ページ46

隼人「ねぇ、ちゃ……っ」


辺りに染まる血の溜まり。


姉が、腹を刺されたのだ。



納戸からのぞくと、ぴくりとも、姉は動かない。




すると、村人達はあろうことかズカズカと、土足で部屋へあがりこんだのだ。

『…ついに妖怪を倒した!倒したぞ!』



『この際だ、金目のものも貰っていっちまおう』


『よし、漁るぞ』



そうして、村人は散り散りに姉弟の部屋へ散っていった。




その瞬間、弟はゆらりと納戸から出て、
赤く染まる姉を抱き起こした。



「……っ、は、隼人………」



隼人「あ、ああ……ね、姉ちゃん……っ、」



「だい、じょうぶ……少しお腹…斬られちゃっただけだから……しばらくしたら、治る……」



隼人「ちくしょう、ちくしょう……!!」
弟は、はらはらと涙をこぼした。

口もとは血がベッタリとついたまま、力なく姉は笑った。




「はやと」



「ごめんね」

ふっ、と姉は目を閉じた。




その瞬間−−−



弟の中で何かが、切れた。






……何で、姉ちゃんが謝らなければいけない。


何で、鬼から村人を助けてやったのに、こんな仕打ちをされなければいけない。


何で、住みかを勝手に荒らさなければいけない。





何で、



僕達が、こんな目に合わなければいけない。





おのれ








あんなに戦った姉を、災厄呼ばわりか。
あんなに住みかを追いやられたのに、さらに出ていけというのか





この、恩知らず






醜い









汚い






我らを【災厄】言うのならば








望み通り、災厄になってやる









我らを【鬼】と云うならば






望み通り【鬼】になってやる









春を待つ、我らの邪魔をすると云うならば




切り刻んで









真っ赤な花冠をつくってやる









永遠に、死んでいけ








愚かな人間共



−−−−−−−−−−−−−−




「……!!は、はや、と……あんた…」



気がついた姉は、倒れたままぎょっと目を見開いた。

ドシャッと、目の前に置かれる赤黒い何か。


それは、切り刻まれた人間の生首達だった。

「こ、これ、さっきの、村人……隼人、な、なにを……っ」


息を荒げながら、弟を見上げた。
まさか、うちの弟が、そんなことを……



しかし、弟の尾から出たノコギリの刃物が血で染まって、すでに事済んだことを証明した。

隼人「……皆、僕が殺した」



ニタァ、と笑う弟の姿に、

「あ、ああ……っ…」


姉は、悲しみとも言えない複雑な涙を流した。

四十二話 過去編 大バカ野郎→←四十話 過去編5



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (54 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
138人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雪ん娘☆ミ | 作成日時:2016年8月25日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。