審神者は人喰い妖怪【刀剣乱舞】 (ページ28)

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二十六話離さないよページ28

加州清光side

－－－－－その日、食堂で異変が起きた。

小夜左文字の腕をつかんだ主は、大きく目を見開き、口からよだれをたらしながら牙をひからせていた。

そう、主は小夜を食べようとしていたのだ。

我に帰った主は食堂から走り去り、へし切長谷部がそれを追おうとした。

長谷部「あ、主…！」
加州「どいて長谷部。俺がいく。」

俺は長谷部を制止し、走り去った主を追いかけた。

そして、本丸を探し回ったあと、ようやく門の外に座っている主を見つける。

加州「主…。」

「あ、き、清光……どうして、ここに…」

一瞬振り返った主は、慌てて顔を隠した。

辺りには散らばった骨、血だまりができている……。
でも、これは主の怪我ではないことは、すぐに解った。

死体をここで食べたのだろう。

「き、清光…見ないで…今、私……っ」

「……！？」

気づいたら俺は、主を自分の腕に抱き止めていた。

「き、よ、みつ…！？なにを……」

「っていうか、離して…！！私血だらけで…」

加州「やだ、離さない。」

「清光…は、離せ……離せったら！！」

加州「やだ、絶対離さない。」

俺はもがく主を更にきつく抱き締める。

離さない、離してやるもんか。

すると、主の腕から力が抜けていくのを感じた。

「……なんでなの？私が、怖くないの？」

歪んだ主の声は、今にもかき消えてしまいそうに小さかった。

加州「もっと凄いやつと日頃戦ってるから、全然怖くない。」

加州「でも、今主がどっか行っちゃう方が俺は怖い。」

加州「だから、絶対離してなんかやんないよ。たかが人肉を食べる妖怪ってなだけで、俺達や人間とはそんなに変わらないんだから。」

「でも、私…っ、大切な刀を食べようとして…！！主失格だよ…！！」

主の、異様に縦すじに伸びた黒目から大粒の涙がこぼれた。

加州「そんなことない。皆であの後主を探し回ったんだから。

それに、皆に合わせて毎回普通のご飯を食べる努力…俺は凄いと思う。」

俺が主の肩に手を添えると、はらはらと熱い涙が主の顎を伝っていった。

「清光……。……ありがとう。」

加州「どーいたしまして。元気でた？」

「うん。明日ちゃんと、皆に謝る。左文字兄弟にも…小夜を怖がらせちゃったから。」

加州「ん。解った。」

主…、俺はずっと主の味方だからね。

絶対、離してなんかやんないんだからな。