事勿れ主義【イルミ】 (ページ6)

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ヒソカは殺人鬼である。
そう快楽殺人者、サイコパスである。
そんな人物と行動を共にするということは殺人現場とも鉢合わせるわけで。
私の頬に、血が流れている。
まだ少し、生暖かい。
ヒソカが殺した人の血が、べちょり、と私の頬に付着した。
人間という生物は、衝撃的な事を目の当たりにしても自分に被害がないと理解していたならば、案外冷静を保てるものらしい。
それでも生理的な嫌悪感は覚えるもので、胃から熱いものが逆流してくる。
「吐いていいよ☆」
胡散臭い笑顔を貼り付けたまま、ヒソカは私を降ろし、背中をさすってくれる。
嗚咽を漏らし、黄色い胃酸が口から溢れでる。
喉が焼けるように痛い。
「ホント、ゾルディックとはかけ離れた子だね☆」
「…なりたくてなった訳じゃない」
「はいはい」
私が少し落ち着いたのを確認したヒソカは、再び私を俵担ぎする。
私と、私以外の人とのヒソカの態度の差に気味の悪さを感じたが、私一人の力では死ぬという選択しか残らないので、暴れずに従う。
私、原作壊しちゃったよ。
試験が始まってからずっと頭の片隅で考えていたことだ。
私は原作に登場していない。
もちろんヒソカも私を担いでいない。
そっかぁ、私、壊しちゃったかぁ。
現実を受け入れたくなくて、考えが纏まっても私は脳を回し続ける。
人間は、時に知らなくていいものもふとした拍子に知ってしまう。
知ってしまった人間はだいたいは不幸な最後となる。
そう、私は知ってしまった。もとい考えついてしまった。
そもそも『この世界』は本当に『原作』なのかということに。
もし、原作じゃなかったとしたらこの世界は一体なんなんだ。
鳥肌がたち、体の体温が一気に下がる。
1度、落ち着いたら能力を使って原作を読んでみよう。
そこに『斉藤A』という人物が描かれていたのなら、ここは原作世界だ。