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キルアはミルクティー、私はホットのカフェラテを買って、窓に沿うように設置されているカウンター形式の席に横並びに座る。
天気がいいと星空が見えるのかもしれないけど、今日は生憎雲が多い。
「さて、キルアくん」
私が口を開くとビクッと肩を上下に動かすキルア。
「私に言うことは?」
私はジトっとキルアを見る。
「その、すまなかった…まさか、こんなことになるなんて…」
「あ、それは私も思わなかった」
いやほんと、私が合格するなんて…。
ずっと下を見ているキルア。
「怒ってないし、恨んでもないから、顔上げて」
キルアは恐る恐る顔を上げる。
…なんか私が悪いことしたみたいじゃん。
「どうして私をハンター試験へ連れてきたの?」
「身分証明出来るものがほしいって言ってたし、最近のAを見てたら、外に出たいのかなって…」
キルアはたどたどしい言葉で説明する。いつもの自信は何処へ。
「私の本名はどうやって?」
私はカフェラテを口に含む。
衝撃の合格発表の時、ネテロさんが発した私の名前は『A=ゾルディック』ではなく『斎藤A』だった。
つまり、私の応募者名は私の本名だったということ。
そして私はキルアに本名を教えた覚えはない。
…記憶障害とかじゃないよね。
「1回、お前を脅かしてやろうって、Aの部屋のクローゼットに隠れたことがあって」
「…うん」
「その時にみつけたカバンの中にAの顔写真と本名とかが入った手帳を見つけて、それで」
「あー、はいはいはいはい」
学生手帳だ。学生証が入ってるやつだ。
そういやうちの学校、名前のふりはローマ字だったわ…。
頭の中で全てが繋がっていく。
「どうやった私を連れ出したの?」
「朝、支度が終わったぐらいに強力な睡眠薬を盛って」
「こっわ…何それ…怖すぎる…」
強制的に脳の活動をストップさせられたから軽い記憶障害もあったんですけど…
置かれている環境の異常さを再確認する。
いやでも確かキルアって出かける時にキキョウさん刺してるんだっけ?
そんなシーン見たくない…私には刺激が強い…
何これ結果オーライってこと?もぅマヂ無理…。
「最後に」
「はい…ってぇ!」
私はキルアにデコピンをかます。
額を抑えてこちらを睨むキルア。
「恨んでないと言ったな、あれは嘘だ」
片方の口角を釣り上げてそういう私をみてキルアは「テメェ…」と呟いたあと、クシャと笑った。
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作者名:名無し37351号 | 作成日時:2017年4月1日 23時