67 ページ19
艶々と輝く瑞々しい炊きたてのお米が程よく上品なお茶碗に飾られており、その隣にお豆腐のお味噌が湯気を立てている。
おかずには黄金色のだし巻き玉子、そしてほうれん草のおひたしが置かれている。
和食…和食だぁ…
久しぶりの和食に感動する。
「さぁさぁ頂きましょう」
割烹着を脱ぎ、丁寧に畳み終わった薫さんは優雅に椅子に座る。
薫さんって絶対いい所のお嬢様だよな…あの時代に父親から英語を習うって…絶対お父様外交官かなんかでしょ…
私の通っていた学校は確かにお嬢様学校だったけど「豊かなものほど与えましょう」という精神で一定の収入以下の家庭は学費は公立レベルだった。
ついでに私はその一定の収入以下の家庭である。
さらに付け加えるなら一定の収入とはサラリーマンの平均年収であった。
我ながらすごい学校に通っていたなぁと思う。
「いただきます」という薫さんの声で我に返る。
薫さんはちゃんと手を合わせていた。
やっぱり薫さんも日本人なんだなぁ…。
この世界に来てから倫理観のズレが大きすぎて細かい違いに気づかなかったけど、今思えば食前に「いただきます」という人はいなかった。多分。
キリスト教ちっくに食前の祈りはチラチラと聞こえてきたことはあったけど。
私も手を合わせ、生き物に感謝をして、味噌汁に口をつける。
久々のその味に懐かしさが込み上げて、視界がぼやける。
「美味しいですぅ…」
半泣きで感想を伝える。
学校からの帰り道でよくこの香りに襲われて、早く家に帰ろうって気持ちになっていたなぁ。
たまに我慢できなくて友達とコンビニに寄って、お金もそんなに持ってなかったから2人で肉まん分け合って…。
あ、やばい。泣きそう。いや、もう泣いているんだけど。
誤魔化すようにご飯を駆け込んでいく。
90人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名無し37351号 | 作成日時:2017年4月1日 23時