二話 ページ2
そんな話をしていたら、いつのまにか数時間が経過していた。勝手に抜け出してきた喫茶店、帰れコールなんて真っ平御免。
「すいません五条さん、もう帰ります！これで払っておいて下さい！」
千円札を二枚テーブルに置くと、荷物を持って駆け出した。店員さんに「お会計はあの人で！」と言いながら。
.
.
.
「くっっそ……！ウチの家、広すぎて腹立つ！」
これを小学生の頃、クラスメイトの前で言ったら白い目で「へぇ」と言われたのを覚えてる。
程よい広さならまだマシ、幼少期は家の中で迷子になった。
「帰りました！Aです！」
扉を蹴破るようにして(本当に蹴破ってはない)家に飛び込む。
「A？」
普段はとても優しい声なんだけど、この時ばかりは地獄の底から湧き上がるような声がした。
「………………帰りました、母様」
「それは宜しい。ところで……」
今日の気温って何度だっけ。もう１０月だけど、ここまで寒かったかな？
「勝手に抜け出して、どこへ行ってたのかしら？」
.
.
.
スマホの画面には、LI●Eの着信。五条さんから、『お釣りはそっちに送るね！』と言う内容だった。
「明日だっっる」
明日には、御三家などが集まって宴を開く。なんの意味があるのかは知らんが。
僕はそれに出なくてはいけない、本心だと本気で出たくない。あんな爺さんどもの宴に出て何が楽しいんだっつーの。
「はあぁぁぁぁ………」
深呼吸とも言えるため息をつきながら、僕は虚空を見つめる。
何にもないシミが、人の顔を見えてくる。
うつらうつらしていたら、そのまま僕は夢の中へと引き込まれていった。
.
.
.
.
.
小さい頃に、言われた記憶。
「皆、真希みたいになっちゃ駄目よ」
誰がいったのかさえ、覚えてないけど誰でもいい。あのクソみたいな家の誰かだと言うことに変わりはない。
物心ついたときには、部屋の隅で何か黒いものが蠢いていた。
それは時々、僕の視界に入っては話しかけてきた。
僕の周りの大人は、皆見えたから、全ての人がそうなんだと思い込んでいた。
「嫌だなぁ」
「何が？」
「そこに、黒いものがいるもん」
「いないよ？」
「いるよ、見えないの？」
普通じゃないという事実は、小さい頃の僕の心を大きく揺さぶった。
普通の人にはこんなの見えない。
フツウノヒトニハ。
.
僕は普通じゃない。
.
僕がこの家を嫌うようになったのは、いつからだったっけ？
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よもぎ餅 - うわぁぁぁめっちゃ好きです！更新頑張ってください!! (2021年5月21日 0時) (
レス) id: 719e5dac86 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - この主人公くん、可愛いしかっこいい……これからも更新、楽しみにしてます!! (2020年12月24日 17時) (レス) id: 0fd6172cb6 (このIDを非表示/違反報告)
Hakuga0.2(プロフ) - 令和おめでとさん» ご指摘ありがとうございます。変更しました。これからも頑張り続けます！ (2019年7月16日 23時) (レス) id: dd7b975cc4 (このIDを非表示/違反報告)
令和おめでと(プロフ) - 凄く面白いですね!!応援してます！(因みにぜんいんさんの｢ぜん｣は禪ですよ) (2019年7月15日 21時) (レス) id: 2c2d950afb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Hakuga0.2 | 作成日時：2019年7月15日 13時
