本丸偵察隊記録ー壱偵察隊、結成ー【薬研藤四郎】 (ページ6)

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「いえいえ、こちらこそ。わざわざお時間を作って頂き、光栄です。」

　総長と共に、彼女に対して頭を下げる。そして彼女に案内され、僕らは本人が運営する本丸の場内にへと足を踏み入れた。

　実際に中に入ってみる。そこはまるで、田舎の古民家のような造りになっていた。縁側を通る途中、多種多様な刀派の短刀達が仲良さげに遊んでいる姿が見られる。

　ここだけの話、僕自身ある程度は役人の研修時代に内装の事を大枠に聞いていた。でもこうして誰かの本丸に訪れるという事は今までになかった。それもあるし何といっても、その当時の内装は田舎を思い出させるようで大好きだった。

　縁側を渡り、その足で少し細長い通路を辿っていく。しばしば襖の奥の方では男士さんらしき人達が談笑している声が聞こえて来た。

「それで、その……。本日こちらに迎え入れる予定の男士様は、今どちらに？」
「先程、本丸の者が呼びに行って……。あぁ、もう待機してくれていましたね。薬研さん、この方ですよ。」

　襖を開けた審神者さんの表情が、ほんの少しだけ明るくなる。それに続いて僕と総長も中に。

　部屋の中では薬研くんともう一人、大倶利伽羅さんが待機していた。審神者さんいわく、彼が薬研くんの事を呼びに行ってくれていたらしい。

　彼女から見ても、一匹狼の面影がある彼。任務以外であれば比較的大倶利伽羅さんと一緒にいる事が多いそうだ。さっき縁側を通っていた時に、僕にそう教えてくれていた。

　その当時の薬研くん。雰囲気自体は今と、さほど変わらない。強いて言うなら今のような優しい雰囲気があまり感じられない、どちらかというと物静かな印象の方が強かった。