本丸偵察隊記録ー壱偵察隊、結成ー【薬研藤四郎】 (ページ14)

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「ずっと思ってたんだが……お前、変わりもんだよな。俺がこうしている時も、隙さえあればこうやって話しかけようとして来るし。」

　ぐさり。彼の言葉が、音を立てて胸を突き刺す。だけれどこれを逃したら、次またこうして話せるかは分からない。ある種のチャンスだと考えた僕は、平然を装いながら口角を上げて話しを始めた。

「だってほら、せっかく仲間になったじゃない。僕たち。薬研くんはさ、僕とかここで出会った人とかと仲良くしたいって思ったりしない？」
「……。」

　また沈黙、どうも居づらい。頭で少し悶々としていると、何を思ったのか薬研くんが息を吐きながら言葉を紡いだ。

「その人がいずれ、いなくなるとしてもか？従者として、主として。……人間は俺たち男士より、はるかに短命なのは目に見えている事だろう。」

　霊力から伝わって来るのは、彼の負の心情。彼の心の中では、誰かの名前を泣き叫びながら懸命に呼ぶ姿が脳裏に過る。気付いた限りでは、二人だった。仲間に審神者が他界したことを告げられて泣き、またあるところでは炎の中にいるやもしれない審神者を助けようとした所を引き止められて泣いていた。

　きっと総長が話していたのは、この人たちの事なんだろう。これは昔からある能力のようなものなのだが、僕は相手の心情を霊力伝えで感じ取る事が出来る。時と場合にもよるが、それに加え今のようにその人の過去なんかも見えたりする。

　いわばその人がどんな環境で育ち、どのようにして今の姿になったのかがある程度分かってしまうのだ。

　昔は僕も、自分の持つこの能力が怖かった。この能力の事も、誰かに打ち明ける事も無かった。もし知らずのうちに、他人の心を見てしまったらどうしよう。誰にも言えないまま過ごした、まだ青かった学生時代が懐かしい。

　その霊力伝えで感じたのは、深淵のような悲しみ。心の奥ではきっと、今も泣いているのだろう。これから察するに、彼は自然というより意図的に人と一線を引いているような気がする。概ねその理由としては、自己防衛。これは僕ら人間でも、充分にあり得る話。

　僕はどうしても、そんな彼の事を放っておくことが出来ないと強く思った。今の彼をより分かってあげられるのが、ここの中では彼しかいないのだとしたらと思うと……余計に。