本丸偵察隊記録ー壱偵察隊、結成ー【薬研藤四郎】 (ページ13)

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　それからというものの、僕は再び薬研くんと交流を深めようと彼を見かけた時には声をかけるように心がけていた。あれ以来部屋に帰ってくるのは、寝る時とご飯を食べる時くらいになってしまっていたのだ。

　薬研くんは政府の中にある資料室、学校で言う図書館に似たような場所にいる事が多い。最初こそ一つの場所にとどまっていたりはしていなくて探すのに苦労した。

　でも日を重ねるにつれ、彼がその日どこにいるであろうというおおよその目星を付けられるようになっていた。

　見つけてからも初めの方は読むのに忙しいだとか、ここでは静かにしろだとか叱られ続けたこともあった。それでもなお少しでも彼の心に近づきたくて、僕は懸命に関わり続けていた。

　取り組みを続ける事、数週間。ここまで来ると仕事とは別な日課になりつつあった。それに加え、次第に話題も尽きてくる。

　それでも最初の頃と違った事が、確かにあった。実は薬研くんの知らない所で、以前彼とすれ違ったらしい二人の男士さんとばったり会ったのだ。何でも二人とも、元々薬研くんとは同じ本丸にいた時期があったんだそう。

　二人に今の事の経緯を大枠に話すと、彼との関わりでのコツをいくつか教えてくれた。そして今僕は、その話を聞いてから資料室で薬研くんの前にいる。以前までなら半場スルーに近い反応だったのに、僕が二人の話をするとピクリと眉が動いた気がする。

　パタリ、と音を立てて閉じられる本。はっとして前を向いてみれば、ずんずんとこちらに向かって歩き続けている彼の姿が視界に入った。

「薬研、くん？どうかして……。」

　僕の方から近付く事はあれど、薬研くんの方からここまで近付いて来ることは今までに無かった。本来であれば今までの事が実を結んだと、喜ぶべき所。

　それでもその時は、素直に喜べなかった。……なんて言ったって当の本人が、こんなにもこちらに詰め寄ってくるなんて思っていなかったからだ。