十一 ページ12
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「じゃあ、どうして時の政府は彼を偵察隊の男士に任命したんですか? それに、僕の従者にしようとしたのも……。」
「色々理由はある。が、一番はやっぱり本人が当事者だったって言うのが強いな。普段の感じはああだが、俗に言うブラック本丸とホワイト本丸。両方経験しているからこそ、他の偵察隊にいる男士に分からない事も分かるかもしれない。」
総長の言う通り、偵察隊の従者を務める男士の中にはブラック本丸に属していた経験があるものもいるそう。その上薬研くんのようにブラック本丸だけでなくホワイト本丸も経由しているとなると、その確率自体かなり低い事になるという。
「それから、お前の従者にした理由は一つ。さっきも言った通り、お前ならあいつの事を一番分かってやれるって思ったからだよ。」
柔らかい笑顔。おそらく総長は、あの事を言っているのだろう。審神者さんに限らず時の政府に雇われている人は、霊力と関係の深い能力を持っている事が普通だ。そして僕もまた、そのうちの一人であるというのは紛れもない事実なわけで。
「総長。」
「ん? どうかしたか?」
ここまでの話を踏まえた上で、僕は総長にあるお願いをしようと決めた。実際出来るかどうかはともかく、やってみるだけはある。
「あの子の事。薬研くんの事……僕にもっと、教えてくれませんか?」
僕がそう伝えると、目の前の彼は嬉しそうに目を細めていた。
「お前ならきっと、そう言ってくれるって信じてたよ。」
その日から総長の方も、何かあれば色々とサポートをしてくれるようになった。それを基にして、今後彼とどのように関わるか。そしてどうやって共に仕事をこなしていくかを考えるようになった。
初めの方こそ、それが上手くいくかの保証なんてどこにもなかった。だけれどこうして話を聞いて貰った上、少しでも希望を持つことが出来るかもしれない。その可能性にかけ、僕は薬研くんと親睦を深める道を選んだのだった。
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作者名:笑(えみ) | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/60566076
作成日時:2020年10月24日 23時