【男主】代表取締役のお兄様【kgm】 (ページ41)

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「兄様」

袖を引かれ、振り向く。
ハヤトは俺の方を向いておらず、団子が売られている屋台の方に向いていた。

『お参りした後な』

「分かりました、私良い子なので待ちます」

『ん、良い子だな』

ハヤトに袖を摘まれていた方の手をハヤトの頭の上に乗せて左右に動かす。

「あの、兄様…？私もう子供では…」

『良い子なんだろ？良い子は褒めないとな？』

「くっ…、兄様の顔が良い…」

それを聞き流しながら、進んでいく列に倣って進んだ。
マフラーに顔を埋めて寒さを和らげていると、コートのポケットに入れたスマホが着信を知らせる。

『…ん？』

ポケットから取り出したスマホを見れば、ハヤトに見せるべきだと思った名前がそこにあった。

『ハヤト』

「はい、何です？…って」

ハヤトは俺のスマホを見るなり、後ろを振り向いて目を凝らす。

「何処だ…？何処に居る…？」

獲物を逃した殺人鬼のような言葉を言いながら探すもので、流石の俺でもマズイと思って振り返る。
すぐに見つけたそれに、俺はハヤトに耳打ちをした。

『結構後ろ。ほらあの、少し飛び出てるのと派手なの』

「…あぁ、あれだ。流石ですね、兄様」

『別に』

「おぉ〜い！！！今気付いたやろあれぇ！！！」と後ろで騒いでいるのを聞きながら、無視してハヤトに後で何団子を食べるのか聞く。

「というか、甲斐田さんとはLINE交換してたんですね」

『ハヤトが本気で嫌がることは出来なさそうだと思ったから』

「出来ないようにさせてますからね」

スマホをポケットにしまい込み、歩を進める。

『まぁでも、団子食べてるうちにあっちもお参り終わりそうだけどな』

「兄様と食べれれば私はそれでいいので、持ち帰りにします？」

『話したいこととか無いのかよ』

「無いです」

即答ということは本当にないらしいので、俺はそれ以上何も言うことはない。
青の広がった空を見上げ、今年も始まったな。と微笑んだ。

「兄様、交換しませんか」

咀嚼の動きを止め、ハヤトを見つめるとハヤトが持っていた団子がまだ刺さった串を差し出される。

「私も磯辺餅食べたいです」

『…ん』

受け取るのが煩わしく、ハヤトが持っているまま1つ団子を食べた。

「え…」

『うま』

ハヤトのみたらし団子を食べさせてもらったお返しに、自分の磯辺餅餅をハヤトの口元に近づける。

『ん』

「な、な……」

『食べないのか？』

「いや食べますけど！！」

ハヤトは串に残った最後の磯辺餅を頬張った。