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「兄さんが私だけの兄さんだけじゃなくなってしまった…」
ハヤトが俺を見てそうぼやくようになって早数日。
流石にイライラする。
『ハヤト』
「…はい」
『俺の合成音声じゃない声を聞いてるのはお前だけ、俺の姿をその目で見てるのはお前だけ。分かったら黙れ』
そう言うだけ言って読書に戻れば「兄様っ!」と真正面からハヤトに抱き締められた。
『本折れるだろふざけんな』と言いながらも、俺は本を置いてハヤトの背中に手を回す。
「やはり兄様は兄様ですね。ずっと変わらない、特に突然爆弾落としてくるところとか」
『俺は爆弾魔か何かか』
「ろふまお出れますよ?あ、私Dに直談判して来ます」
『出ねぇよ』
ハヤトが兄様呼びに戻るのは本当に素の時だから、特に指摘することはせず、ハヤトが落ち着くまで話を聞いてやる。
「ん…私の中の兄様からの愛情欲求がパロメーターぶち抜くくらい満たされました。いや、ぶち抜くくらいじゃなくてぶち抜いてますね。兄様のせいでパロメーター壊れました」
『俺のせいにすんな』
そう言って離れ、俺は読書を再開する。
ハヤトはそんな俺の向きを変えて、肘置きに背中がつく向きに変えさせられた。
ハヤトはソファに寝転んで、俺の腰とソファの間に空いている空間に両腕を入れる。
『…最近業務の方は』
「今までとさほど変わってませんね、量は多くなってますけど。嬉しい悲鳴です」
そう言うハヤトの眼鏡を外し、目元をマッサージしてやる。
「…兄さんマッサージ上手くないですか?」
『毎日自分に鞭打って無理して帰って来る奴が居るからな』
「…すいません」
どうやらしっかりと自覚しているようで、ハヤトは大人しく俺にマッサージされていた。
『…だいぶ解れただろ』
「はい、お陰様で」
『ならいい』
そう言って読書に戻ればハヤトは俺に抱き着いたままでいる。
特に変なことでもないので放置していれば、突然腹の辺りに重みが来た。
本から視線を外せば、静かな寝息を立てているハヤト。
俺はハヤトを起こさないように拘束から抜け出し、ブランケットを持ってきた。
『お疲れさん』
ハヤトの頭を撫で、立ち上がって自分の部屋へと向かう。
あーあ、俺なんて居なければ。なんて心のなかで1人ごちて、頭の後ろを掻く。
ハヤトも不幸だよな、こんな兄持って。
何で低スペックな俺の下に生まれたんだか。と思いたくなるほどよく出来た弟に対する嫉妬心が形を変え、また一つ醜い感情へと変化する。
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書籍姫(プロフ) - わぁ...好きです...応援させていただきます!! (11月18日 19時) (レス) id: b249051f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病帰-yamiki- | 作成日時:2023年11月17日 4時