【男主】代表取締役のお兄様【kgm】 (ページ20)

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『ん…美味い』

「ふふ、それは良かったです」

口の端にカスタードクリームを付けながら可愛らしい顔でシュークリームを食べる兄様を眺めながら自分もシュークリームを食べる。

だいぶ前に兄様を怒らせた罰として2人で買ってきたプリンとシュークリーム。

兄様がショーケースの中をキラキラした顔で覗いてるものだから、パティスリーに居た女性の方全員に「あのお兄さんかわい〜」と言われていたのを思い出す。
当の本人は、そんなのお構いなしにショーケース見てましたけど。

『…モンブランも食べたかったな』

「ふふ、甘いものだけは本当によく食べるんですから…。今年のクリスマスケーキはモンブランですかね」

『もちろん』

毎年この時期になると考え出すクリスマスのこと、
今年は兄様に何を贈ろうか。と考える。

今年、兄様には大きな変化があった。

配信に声が載って、皆さんに知られ、何人かのライバーの方達とも会い、歌ってみたも録り。
一般人から新人ライバーに変わるのと遜色ない変化。

「兄様、お疲れ様です」

『何だよ急に…。…ハヤトも、お疲れさん』

代表取締役の私と、会社経営の要の兄様。
どちらが居なくなっても、加賀美インダストリアルは成り立たない重役。

「兄様、今年は忘年会どうしましょうか」

『行かない』

間髪入れずに返答された言葉に苦笑する。

「毎年行ってないじゃないですか」

『加賀美が2人居るのキツイだろ、他の奴らが』

「ははwそれもそうですね。では、兄様は今年も不参加ということで」

シュークリームの最後の一口を口に放り込みながら頷く兄様に思わず眉を下げた。

私が代表取締役になってからという割と短い期間ならまだしも、聞いた話ではお父様が代表取締役の頃から行ってないらしい。
胃をキリキリと痛ませながらどうにか兄様を連れて行こうと色々考えたが、どうも兄様は動かなかったらしい。

「行きたくない理由とかあるんですか？」

私がそう聞くと、プリンを見ていた視線を一度どこちらに寄越してすぐにプリンに戻した。

『雰囲気で酔いそうになるから嫌だ』

「あ〜…そういう方居ますよね」

そう言いながら、兄様が酔っている姿は他の人に見られたくない。と思って、来年から兄様に聞くのはやめようと思う。

『…でも』

「どうされました？」

『ハヤトと酒飲めるのは、いいな』

「兄様、今年は二次会無しにします。お酒も飲みませんので、用意お願いします」

毎年寂しい思いをさせているのは申し訳ないですし。