【男主】どれが好み？【2j3j】

好きなものが8つ ページ8

『…』

絶賛二日酔いに苛まれている俺は、家で水を飲みながらニュースを見ていた。
物騒なニュースしかねぇな。などと思いながら、テレビを消してソファに横になる。

すると、仕事用じゃないプライベート用のスマホが着信を知らせた。

『…もしもし』

[あ、もしもし〜？]

『んだよ…』

電話の相手の特徴的な声に思わず顔顰める。

[灰くんから昨日のAくんの状況聞いて、少し説教しに]

ぷつっ。

流れるように電話を切って着拒すれば、次は怒涛のスタ連。
無言でニコ、と笑っているスタンプにイラつきながら無視していれば通知音が止んだ。

そして、等間隔ではない間を空けてメッセージが来た時の音が連続する。
何が来てるんだ？と見れば、

ねぇ、何で切ったの
何で着信拒否したの
返信遅い
何、既読無視?
ねぇ、返信して
ごめん
謝るから返信して
客が悪いのは知ってるから
返信してってば
おねがい、僕を拒絶しないで
死んでいいの?
いいの?本当に死ぬからね?

と、メンヘラ客のようなメッセージが来ていた。

流石メンヘラ客をそれ以上のメンヘラで撃退した男。
今まで相手してきたどんなメンヘラよりも面倒くさい。

死んだら誰が悲しむと思ってんだ

そう返信すれば1秒未満で返信が返ってきた。

僕のこと愛してくれてる客
他には?
一緒に働いてる、みんな
分かってんなら、意地でも生きろ

その言葉で、会話は途切れる。
きっと、気づいたんだろう。

ごめんね、こんな僕のこと嫌いだよね
嫌いなら嫌いって言ってね
一緒に心中してもらうから

前言撤回、コイツ何も分かってねぇ。

しねぇよアホ

そう言うと、

僕の名前はアホじゃないよ
ほら、僕の名前は?

と返された。
こいつの名前は、

面倒くさいやっちゃな、叶

声と口調、ルックス全てにおいて何かの保養になる、と噂のホスト。
叶を指定する客は必ず全員叶を「天使だ」と形容する。

が、俺からするとこれ以上ない悪魔に思う。

なんてったって、コイツは重度のメンヘラ。
目をつけられれば逃げることは難しい。

そんな奴に目をつけられた俺を誰か可哀想だと同情してくれ。

好きなものが9つ→←好きなものが7つ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す