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緩やかなクラシックが流れる
落ち着いた雰囲気のカフェ。
蜂蜜色の柔らかな髪を後ろに流し、
碧眼を眼鏡の奥に覗かせる、
端整な顔立ちをした異国人がそこに居た。
その異国人は店内の隅の角に座っているのに
妙に目を惹かれてしまう。
異国人は携帯を片手に持ち、
コーヒーを一口飲んでソーサーに戻すとふぅ、
と息を吐いた。
そして、音楽に耳を傾けるように
澄んだ瞳に瞼を重ねた。
少し眉を顰めたように見えた後、
ゆっくりと開かれた碧眼。
少しズレた眼鏡を中指でそっと上に押し込むと、
携帯の画面に視線を戻していた。
此方を一瞥したかに見えた空色の瞳は、
Aを映すことなく、
画面をじっと見つめ続けている。
時折伏せられる瞼の開かれた後の瞳の輝きは
一層増しているように感じられるほど美しい。
暫しその異国人の様子を眺めていると、
不意に声が掛かった。
「君」
どこから呼びかけられたのだろうか。
しかし、辺りを見回すも誰も居ない。
改めて目線を先程の異国人へ向けようとすると、
異国人の居た筈の席は蛻の殻になっていた。
まだ近くには居るだろう、
と辺りを見回すも居る気配がない。
何だ、と肩を落とすと再び声が掛かった。
「君、…さっきから俺に何か用かい?」
すると、真正面に頬杖をつきながら尋ねる
先刻遠くから見ていた異国人が
目と鼻の先に座っていた。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2021年2月13日 23時