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『アベンチュリンとの運試し、楽しかったから。まぁ、負けたのは悔しいし、次は負けない、って思ってるけどね?』
「…へぇ?"次"も遊んでくれるんだ、僕と。嬉しい事を言ってくれるねぇ、マイフレンド」
『それこそ、友人だからね。次遊ぶ約束するのは当然でしょ?』
「あぁ…確かに。それもそうだ」
"友人だから"。
彼女の言葉を、胸の内で反芻する。
僕が思う"友人"は、僕にとって"利用価値のある存在"のことで。恐らく彼女の思う"友人"とは定義が違うのだろうけど。
彼女の真っ新な気持ちが込められた言動は、それこそ「主人公」に相応しい。だが、穢れが無さ過ぎて、時として僕に不快感さえ与えてくる。彼女に退屈しないのは確かだが、思惑や私欲渦巻く場所に普段居るせいか、彼女と居ると何処か「自分」というものが揺らぐ気がする。
彼女を横目で見ながら、ぼんやりとそんな事を思っていると、盛大な溜め息が落とされた。
『それにしても負けちゃったかぁ…。アベンチュリンと何かできる事の方が、勝敗より重要だな、って思っちゃった所為かな。…勝負に雑念が入ったせいで、運の神様に見放されたのかも』
ソファに背を預け、ふぅ、と息を吐いて、彼女は残念そうに肩を落とした。僕も彼女に倣って、ソファに深く座り直し、ゆっくりと息を吐く。
「雑念、ねぇ。…確かに目の前の勝負に意識を向けるのは大事だけど、君の言う『雑念』は誰しも持っているものだし、それが勝負に好機を
その雑念が、自分に対して上手く作用するかどうか_雑念を抱える自身に有益な結果を
人だからこそ思考する。人だからこそ感情がある。そこに付け入る隙が生まれる。それを利用し、利用される。賭けとは__人生とは、そういうものだから。
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2024年2月1日 19時