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『…そんなのアリ?』


勝利の余韻に浸る間が無いに等しかったせいか、彼女は恨みのこもった様な声で尋ねてきた。だが、怒りより落胆に近いその声は、ある意味彼女らしい反応に思えた。


「ナシでは無いよね。だって、1回勝負だとは言ってないし、君もそれに関しては何も言わなかったから。…ってことで、3回勝負でどうだい?」


流れる様にそう提案すれば、彼女は困った様に眉を下げた。


『負ける未来しか見えないんだけど…』


「そんな事ないさ。既に君は1勝してアドバンテージを得ている訳だしね?」


3回勝負なら、彼女は後1勝すれば勝ちなのだ。僕より有利な状況で、何を躊躇う必要がある?


「ギャンブルに臆病な心は必要ない。…そうだろう、A」


彼女ならノるであろう言葉を、口にする。真っ直ぐ彼女の瞳を見つめれば、覚悟を決めたらしい、揺らぎのない瞳が見つめ返してきた。


『1回勝負ってのも、味気無いもんね』


「…君ならそう言ってくれると思ったよ」


安堵の息を吐いて微笑めば、彼女は自身の事を見透かされた様で恥ずかしかったのか、頬を掻いた。


『上手く口車に乗せられた気がする…』


そう呟かれた言葉には、聞こえないフリをした。

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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/  
作成日時:2024年2月1日 19時

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