【スタレ】『開拓日記』 (ページ6)

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「それじゃあ…」

立ち上がって、僕がその場でコインを投げようとすれば、少し呼吸を整えた彼女から『待った』の声が掛かった。

『ねぇ、そのコイン…確認しても良い?』

彼女は、コインを指差しながら、こちらの顔を窺う。

「あぁ…うん。存分に確認すると良い」

…興奮冷めやらぬ状況でも、流石に抜かり無いね。

感心しながら、彼女がコインの状態を確認するのを眺める。一通り調べ終えたらしく、彼女からコインを手渡された。

『ありがと。もう大丈夫』

「なら良かった。…じゃあ改めて」

彼女から受け取ったコインを、指で弾いて空へと投げる。投げたコインは宙を舞って、放物線を描き地面に向けて下降していたが、手の甲を台代わりに、空いた掌で覆うようにして受け止めた。

「今なら賭ける向きを変えても良いよ。…どうする?」

彼女に尋ねれば、む、と眉間に皺を寄せる。

確認のつもりで言っただけだったのに、悩ませてしまったらしい。…まぁ、彼女が選択を変えたところで何ら問題は無いのだけれど。＿＿だって、結果は決まっているんだから。

彼女の瞳を見つめて微笑めば、彼女は一つ深呼吸をして少しの間僕と視線を交わしてから、コインのある手元に視線を戻した。

『………数字が表で、絵柄が裏…だったよね?』

「あぁ」

『なら、変えなくて良いかな』

彼女の声は完全とは行かないまでも自信に満ちていた。

…どうやら、洞察力に自信があるようだ。

「じゃあ、結果発表と行こうか」

『うん』

す、と覆う手を退ける。コインは絵柄のある方が上になっていた。

「裏だ」

僕が短く告げる。そう、それはつまり。

『……私の勝ち?』

「うん、おめでとう。君の勝ちだ」

賞賛の拍手を贈れば、彼女は幸せそうに含羞む。そんな彼女に笑いかけながら、僕はこう付け足した。

「今回は、ね」

『え、…今回?』

予想通り＿＿というか、まぁ当たり前の反応が返ってくる。喜びから一転して驚いた表情を浮かべる彼女は、見ていて心地が良い。

あぁ＿＿そういう表情、僕大好きなんだよね＿＿そう、前に彼女に言ったはずだけど、覚えているかな。まぁ、覚えていようがいまいが、どっちでも良いんだけど。

「ゲームを始める前の事を思い出してくれれば良い。…何回勝負か、言ってなかっただろう?」

そう問い掛ければ、彼女は額を押さえて、重々しく溜め息を一つ溢した。