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『…ところで、何をやるの?』


彼女が瞳を輝かせながら問うてくるものだから、僕は笑い声を上げそうになった。ここで笑うと、彼女の機嫌を損ねてしまうかもしれない、と必死に堪える。

以前本人に言ったら否定されたが、彼女は僕程では無いにせよ賭け狂い(ギャンブラー)だ。好奇心という耐え難い病気に侵されている。そんな彼女に悪い気がしないのは、同類を見つけた喜び故か、果たして。少なくとも、彼女と居ると退屈しないのは確かだった。


「コインにダイス、トランプにルーレット、ダーツにビリヤード…此処は何でも揃えられるからね。君はどれが良い?」


『うーん…。肩慣らしにコイン、かな』


「オーケー。じゃあ、まずはシンプルにコイントスと行こう」


そう言って、懐からコインを取り出す。クルクルと指の背で転がして弄んでから、人差し指と中指で掴んで彼女にコインの柄を見せた。


「コインの数字のある方を表、絵柄のある方を裏として、このコインを投げて僕が受け止める。そうだね…表が出たら僕の勝ち、裏が出たら君の勝ち、で良いかな」


彼女がコクリと頷いて、同意する。特に不満も疑問も無い様子だったので、言葉を続けた。


「…で、1番重要なのは"何を"賭けるか、だけど…。うーん、そうだな…"1時間、勝者は敗者に何でも命令出来る"…っていうのはどう?…あ、でも肩慣らしだから、このゲームでは何も賭けない、っていうのもアリだよ」


『……な…何でもって、本当に何でも?』


元々肩が触れるぐらいの距離に居たのに、更に距離を詰めるように僕の方に顔を近づけてくるので、思わず一歩退く。…彼女の距離感は、思考や視野が狭まると時々可笑しくなるからいけない。


「そこに食い付くんだね、君は…。うん、"何でも"だよ。それこそ、雑用でも、仕事でも…何処かにお供でも。__1時間だけ、ね」


僕がそう言うや否や、彼女はソファから勢いよく立ち上がって噛み締めるようにぐ、とガッツポーズをすると、僕に向き直った。


『その賭けノッた!!!』


それは、今まで彼女と会話した中でも、恐らく1番大きな声に分類されるほど、元気の良い声だった。

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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/  
作成日時:2024年2月1日 19時

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