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コンコンコン、と部屋の扉がノックされる。
「マイフレンド、居るかい?」
扉越しでもハッキリと聞こえる声。誰だろうと思う間も無く、声の主が誰か分かった。私の事を「マイフレンド」と呼ぶのは、今のところ彼しかいない。
『…居るけど』
「それは良かった。ここを開けてくれるかい」
扉を開ければ、そこにはいつもの胸元の開いた派手な服では無く_正装とでも言うのだろうか_露出部分の一切ないピーコックグリーンの色をしたシャツに、黒いネクタイと黒いベストを着て、その上からジャケットを羽織った、カッチリとした装いのアベンチュリンが立っていた。
『どうしたの?』
尋ねながら通路を開けて部屋に招く。
アベンチュリンは「悪いね、お邪魔させてもらうよ」と言いながら、部屋の中央まで歩いて行った。そうして、扉を閉めてから彼の
「ちょっと考えてみたんだけど」
突然何の話だろう、と首を傾げると、彼は「あぁ、僕としたことが」と
「気が
『………今日?何かあったっけ?』
顎に手を当てて考えたが、特に何も浮かばない。
首を傾げたままアベンチュリンを見つめれば、やれやれ、とでも言う様に、彼は肩を
「ひどいなぁ。1ヶ月前の別れ際に僕が言ったこと、忘れちゃったのかい?…まぁ、君は銀河を股に掛ける星穹列車の一員だ、僕との些細な逢瀬なんて、忘れてしまうのも無理はない」
そう言って、アベンチュリンはニコリと微笑んだ。その表情はいつもの軽薄な笑みというより、圧を感じさせるものだった。
あ、なんか怒らせたかもしれない。
うーん、と頭を悩ませ、何とか答えを捻り出す。
今日から1ヶ月前に、何があったか_何をしたか。
そういえば先月のこの日はイベントごと_バレンタイン_があった。
…ということは。
『今日、ホワイトデーか!』
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作者名:シメ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b78ff5dd8c1/
作成日時:2024年2月1日 19時